主宰俳句
朴の花 田島 和生
まつさらの花あげて朴ゆるぎなし
鳶の眼の底ひ深紅の牡丹ゆれ
初ひばり散居村良き水照らす
クローバの風深く吸ふ喇叭吹
夏近き難波宮址を鼓笛隊
枕辺は雑書ばかりや夏灯
へこ帯の如くほどかれ笹粽
青梅へ御籤ちかぢか結はれけり
同人作品評(5月号) 津森 延世
柚子一つ新たに浮かべ仕舞風呂 度山 紀子 家族がみな無事に過ごし、冬至の一日を終えようとしている。特に真新しさはないものの、当たり前であることの大切さが滲み出ている。「新たに浮かべ」が着眼のよろしさかと思う。自身への労りが清潔に詠みこまれている。
白加賀てふ札のをちこち梅日和 本多 静枝
第一印象が、加賀らしいと感じ、思いをめぐらせた。着物について、全く疎いので私なりの想像で申し訳ないが、「白加賀」は白絹のことで、これをさらに染めるのか、それとも裏地に使われるのだろうか。いずれにしても需要の多さが「札のをちこち」でわかる。この町の風情は「梅日和」によって、加賀の文化共共に強く醸している。
紅頬集 秀句佳句 田島 和生 主宰
くもり来し白山仰ぐ田植かな 古西 純子
加賀の穀倉地帯の広い水田で田植が一斉に始まる。時々、仕事の手を休め、雪が残る白山を仰ぐ。ぼんやり空が曇り始め、白山もうっすら隠れる。壮大な光景を詠み、「くもり来し」にも実感があって大変いい。
以上、俳誌「雉」7月号より抜粋いたしました。