「雉」北陸地区のブログ

「雉」句会の活動を公開しています

俳誌「雉」11月号から

主宰俳句
       男郎花    田島 和生
   ひやひやと湖へ火色の夜明雲
   ゆつくりと加賀の熟れ田を雲の影 
   木の実落つ金沢暗き隠れ道
   道尽きて海の崖なす男郎花
   蝶々は崖の空より蔦紅葉
   埼鼻に貝殻売女雁渡し
   秋鯖の生鮨(きずし)に酌める框かな
   湖引いて本を繕ふ星月夜

     同人作品評   菊田 一平
掃苔や北鎌倉へ杖を曳き   宮崎 明倫
 川本三郎さんの『今日はお墓参り』(平凡社刊)を読んで、「掃苔」には単なる墓参りの他に江戸時代から「故人のお墓を訪ねて遺徳を偲ぶ」という文化があることを知った。円覚寺明月院をあげるまでもなく北鎌倉には古寺名刹がいくつもあり、多くの著名人が眠っている。けれども宮崎さんの「杖を曳き」には「故人の墓を訪ねて…」とはどこか違う。ことばを代えればもっと日常的だ。きっと北鎌倉のお寺には宮崎さんの縁のひとの墓があるに違いない。今は北鎌倉を遠く離れて頻繁には行けないけれど「今日は杖にすがって」でもお参りに行くという思いだ。


     第26回 雉賞受賞

   岡田 栄子   「硯の里」

次点  辻江 恵智子  「奥能登晩夏」
佳作  梅園 久夫   「牧の落日」
    水野 征男   「三河路の秋」
    児玉 明子   「島薄暑」

おめでとうございます。
これからのご活躍を、心よりお祈り申し上げます。


     紅頬集   秀句 佳句   田島 和生 主宰

新聞は風に吹かれて籐寝椅子   松本 よね子
 縁側のガラス戸を開け、籐寝椅子で新聞を読む。風に吹かれる新聞を押さえながら読む様子が目に浮かび、大変面白い。この人は籐寝椅子が気に入っている。新聞が風に吹かれて読みにくいのも仕様がないのである。

利尻女や石百畳に昆布干す   後藤 かつら
 北海道の利尻島で、利尻女、つまり地元の女性が百畳もある石敷きの広場に昆布を干している。利尻女、石百畳という手堅い表現で、昆布干しの光景を鮮やかに描いている。


以上、俳誌「雉」11月号より抜粋いたしました。