主宰俳句
牡 丹 田島 和生
みづうみは大きな鏡初燕
笹むらへ匂ふむんむん落椿
ひらきつつ牡丹は淡き影重ね
白牡丹内へ内へと紅を足し
金星へ香りはつかに白牡丹
日の差して牡丹くれなゐ繻子(しゅす)光り
牡丹いま王者のごとし蟲よ来よ
本を閉ぢ牡丹また見に出づるかな
同人作品評(四月号) 海野 涼音
野兎の糞(まり)のひと粒雪の上 福江 ちえり
雪の上に野兎の黒く小さな糞があった。雪の白さの中で野兎の糞は一粒だけでも十分に目立ったのである。、糞と雪、その色彩的な対比が感じられた。奥行きのある風景画のような一句である。
瓶詰のフルーツポンチ女正月 宮崎 惠美
「瓶詰のフルーツポンチ」という珍しい物を詠まれている。このフルーツポンチを女性たちで、おしゃべりをしながら食べるものかもしれない。そのように考えると「フルーツポンチ」という食べ物が「女正月」に合っているように思えた。
吉田 泰子 さんを悼む
「事務の神様だった人」 佐瀬 元子
全国俳句大会の投句係を引き受けたときのこと。吉田さんも投句係をなさったことがあるので、どのように進めたらよいか伺ったところ、丁寧にわかりやすく教えて下さった。
その通りに行うと、誠に効率よく進めることができた。ご自分がやってみてよいと思われたやり方を、すべてやさしく教えて下さったことが吉田さんのすばらしさだと、今改めて思います。
本当に有難うございました。
吉田泰子さんの俳句 佐瀬元子選
門柱に一揆の傷や花蘇枋
蔀戸を小春の海へ開きけり
煤けたる明治のちらし蔵開
軒に吊る漁籠を灯せり初ほたる
(他 ご紹介されています)
紅頬集 秀句佳句 田島 和生 先生
梅東風や掛手拭の揺れやまず 古西 純子
寺の境内には白梅がほころぶ。手洗い場に立てば、薄い手拭が東風にいつまでも揺れている。早春の肌寒い風景を捉え、妙味豊かである。別に「亡き夫」の句もあり、慰霊の思いをこめて、作者は三月から四国遍路を始めたらしい。
残雪の枝々揺らし栗鼠二匹 志賀 理子
立春が過ぎながら、まだ寒い。二匹の栗鼠が残雪の枝を渡る光景を素直に詠み、実感があっていい。枝の雪を落としながら二匹の栗鼠が次々渡る様子も目に見えるようである。
校門へつづく桜並木かな 野崎 郁雄
以上、俳誌「雉」6月号より抜粋いたしました。