「雉」北陸地区のブログ

「雉」句会の活動を公開しています

俳誌「雉」6月号から

主宰俳句

      田植水   田島 和生

湧水の蝌蚪の揉み合ひ盛り上がる

巣箱から小鳥一転森に消ゆ

空にまだ残るとんびや春茜

腹這ひて茅茸くひとり遅日かな

昼蛙石屋に仏また生れ

鴨の子の集ひて散つてかしましき

石亀のまはりへ鳴いて小鴨かな

湖岸までいつしか満ちて田植水

 

 

     同人作品評(4月号)   大西 朋

 

夢聞いて成人の日の着付けかな   佐瀬 元子

 成人の日。着付けをしながらの会話は将来の夢の話。希望に満ち溢れた日に相応しく、頼もしい限りである。着付けの最後にはぽんと帯を叩く。新たな門出が眩しい。

 

せりなずなすずなすずしろピザの上   海野 正男

 七草といえば粥かと思っていたらピザの上に。考えてみればピザの上にのっているバジルはハーブ。七草も日本のハーブである。合わないわけがなく、ピザソースに七草とチーズの組み合わせはきっとおいしいに違いない。また七草がピザ釜の中でチリチリとしてゆく様が見え、この句の口ずさんでいて何だか楽しくなってきた。

 

 

     紅頬集の秀句佳句   田島 和生 主宰

 

蝶生まる絹の靴下脱ぐ如く   古西 純子

 蝶々が青虫、芋虫をへて蛹となり、羽化するとき、まるで絹の靴下を脱ぐようである。透き通った絹の靴下を脱ぐと見るのは大胆な比喩だが、美しい蝶々を賛美した表現で、なるほどと思わせる。作品は詩情に溢れ、個性を感じさせる。

 

以上、俳誌「雉」6月号より抜粋いたしました。