主宰俳句
田植水 田島 和生
湧水の蝌蚪の揉み合ひ盛り上がる
巣箱から小鳥一転森に消ゆ
空にまだ残るとんびや春茜
腹這ひて茅茸くひとり遅日かな
昼蛙石屋に仏また生れ
鴨の子の集ひて散つてかしましき
石亀のまはりへ鳴いて小鴨かな
湖岸までいつしか満ちて田植水
同人作品評(4月号) 大西 朋
夢聞いて成人の日の着付けかな 佐瀬 元子
成人の日。着付けをしながらの会話は将来の夢の話。希望に満ち溢れた日に相応しく、頼もしい限りである。着付けの最後にはぽんと帯を叩く。新たな門出が眩しい。
せりなずなすずなすずしろピザの上 海野 正男
七草といえば粥かと思っていたらピザの上に。考えてみればピザの上にのっているバジルはハーブ。七草も日本のハーブである。合わないわけがなく、ピザソースに七草とチーズの組み合わせはきっとおいしいに違いない。また七草がピザ釜の中でチリチリとしてゆく様が見え、この句の口ずさんでいて何だか楽しくなってきた。
紅頬集の秀句佳句 田島 和生 主宰
蝶生まる絹の靴下脱ぐ如く 古西 純子
蝶々が青虫、芋虫をへて蛹となり、羽化するとき、まるで絹の靴下を脱ぐようである。透き通った絹の靴下を脱ぐと見るのは大胆な比喩だが、美しい蝶々を賛美した表現で、なるほどと思わせる。作品は詩情に溢れ、個性を感じさせる。
以上、俳誌「雉」6月号より抜粋いたしました。