「雉」北陸地区のブログ

「雉」句会の活動を公開しています

俳誌「雉」7月号から

主宰俳句

       鮎     田島 和生

大琵琶の鮎ひらひらと釣られたる

釣り上がるいといとけなき鮎の口

みづうみの雨見え来る植田かな

遠嶺まで田水明りの越の国

浜大根沖の立山ほの白き

磯釣の子へ老鶯の幾たびも

   岡山城 2句

音たてて烏城の門へ椎落葉

新茶汲むまろき茶山をまのあたり

 

 

     同人作品評(5月号)   大西 朋

 

立春大吉竹の器に酒をくむ   青木 和枝

 暦では立春といえどもまだまだ寒いこの季節。それでも春が来たと思えばどことなく気持ちが浮き立つ。そんな中、何かよいことがあったのだろうか。竹の器に酒をくんで飲んだ作者。ほのかな竹の香にお酒も進みそうである。

 

梅匂ふ立山白く輝けり   小林 れい子

 どの山々も雪を被れば美しいが、立山のような連峰であれば視界に入りきらないほどのスケールで迫ってきて見事であろう。そして早春の日に輝き、よりその白さを増す立山。その景色を眺める作者の周りに梅の香りが漂い、赤と白の遠近の対比もまた美しい。 

 

 

     新 同 人 作 家 競 詠

 

     立山連峰   生田 章子

新雪立山全容巍巍として

雪嶺の色を変へつつ初日の出

迫り来る立山連峰寒に入る

まなかひにしろがねの山春菜摘む

陽炎に白き立山動く如

立山の宙に浮きゐて冬隣

立山の裾青々と春の風

 

     万葉の海   辻江 恵智子

単線の終着駅や初つばめ

背戸に干し春の小鰯錫色に

乳銀杏四方へ芽吹きの古刹かな

會遊の万葉の丘麦青む

春の日のきらめき蛇行射水

二上山(ふたがみ)へ段々畑すみれ草

万葉の浜辺に遊び跣の子

 

 

     紅頬集 秀句佳句   田島 和生 主宰

 

越の風野に吹き渡り花りんご   福江 真里子

 まだ雪を残す立山連峰から拭き降ろす風が野を渡り、りんご園の薄赤い五弁の花を震わせている。野を吹き渡る越の風という大景と、小さなりんごの花を対比させて詠み、大変気持ちのいい作品である。

 

花嫁の髪に挿しをり赤き薔薇   志賀 理子

 白いイブニングドレスを身にまとった花嫁の髪に薔薇を挿す。それも真っ赤な薔薇。前句に〈花嫁の髪結ふ母や風薫る〉があり、薔薇を挿すのも母らしく、結婚する娘を美しく飾っているのである。

 

以上、俳誌「雉」7月号より抜粋いたしました。