「雉」北陸地区のブログ

「雉」句会の活動を公開しています

雉金沢句会 2019.9.8

於:四高記念館 2F

田島和生「雉」主宰をお招きして、開催いたしました。

 

田島 和生 主宰 俳句

  綾子忌の萩群(むら)天衣無縫なる

  越前の地酒辛口今年蕎麦

 

田島主宰 〈特選〉

  窯出しの五彩の九谷つくつくし    豊田 高子

  組体操決まる一笛天高し       後藤 桂子

  立山の稜線著き秋あかね       山岸 昭子

  水切りの水面に跳ねて夏の果     田崎 宏

  白山が見え鶏頭の紅の陣       海野 正男

 

〈入選〉

ほつほつと笹百合咲ける土手高し     福江 真里子

初鴨のゆつたり浮かぶ橋の下       佐瀬 元子

梅の橋そはそは渡る水の秋        田崎 宏

羅を召され詣づる媼かな         中山 ちえ

駅頭に迎へのおわら踊かな        小林 亮文

向かひ合ひ豆打つ夫婦間垣村       辻江 恵智子

十五夜の屋根に幼の歯を抛る       後藤 桂子

燈台へ細道つづき葛の花         福江 真里子

水を打ち十年ぶりの友を待つ       中山 ちえ

仏花剪る畑にすだくちちろかな      山岸 昭子

ぼんぼりへかざす手白し風の盆      小林 亮文

葬送の庭に縺るる秋の蝶         辻江 恵智子

九頭竜川の闇の深さや苦うるか      海野 正男

竹伐るや風筋変はる平家谷        豊田 高子

鰯雲海のはるかへ広がりぬ        福江 ちえり

浜風に葛大揺れの能登路かな       福江 真里子

北へ向く露兵の墓や曼殊沙華       辻江 恵智子

在りし日の踊り姿や風の盆        本多 静枝

二百十日帆柱軋む船溜り         海野 正男

ガス磴を映し無月の女川         豊田 高子

穏やかな遺影に活くる芒かな       中山 ちえ

水引の先まで赤き雨上がり        福江 真里子

白山に雲の棚引き早稲刈りぬ       豊田 高子

新涼や山脈いよよ青かりき        度山 紀子

 

主宰選評

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雉金沢句会 2019.7.13

主宰俳句 

   金沢の溽暑極まり袋小路     田島 和生

   孑孒 のここよここよと踊りゐし

 

〈特選〉 

   星待ちて開くや烏瓜の花     山岸 昭子

   白髪をひとつに束ね灯の涼し   福江 ちえり

   沢蟹の石に身を寄せ泡一つ    海野 正男

   大切子暴れ祭の火の粉浴ぶ    豊田 高子

   梅雨晴の青き立山野辺送り    佐瀬 元子

 

〈入選〉

土掘りてをればひらりと揚羽蝶     佐瀬 元子

朝採りの胡瓜に光る滴かな       中山 ちえ

老幹に艶めく青蔦上りをり       生田 章子

初なりのトマトのサラダ朝餉かな    小林 れい子

滝行に祈る女のうら若き        辻江 恵智子

友訪へば腰に蚊遣火ぶらさげて     山岸 昭子

うたた寝のうなじの日焼け礼拝堂    福江 ちえり

雷鳴に園児駆けゆく早さかな      田崎 宏

  悼 石黒 哲夫 師

天の川渡らんと師の逝きませり     豊田 高子

桐の花恋しさつのる夫のこと      宮崎 惠美

円空物彫る手の甲へ汗ぽとん      度山 紀子

流木に二羽の子鴉雨の浜        佐瀬 元子

亡き子にも氷室饅頭三つばかり     本多 静枝

風涼し展覧杉の瘤の艶         豊田 高子

あきつはや雲を被りて若狭富士     小林 亮文

幼らの菖蒲の葉つぱ剣にせる      小林 れい子

円墳を掠めてくるり夏燕        辻江 恵智子

生れたての蝉に翡翠の眼かな      後藤 桂子

ふるへつつ羽化する揚羽見届けぬ    山岸 昭子

子燕や農道に降りかしがまし      生田 章子

青色といふもさまざま七変化      福江 真里子

饅頭買ふ風に裾舞ふ麻のれん      福江 真里子

初蟬や芭蕉ゆかりの蓑毛塚       佐瀬 元子

河骨の明りに映る城の影        後藤 桂子

湖昏れて浮巣に小さき声したり     豊田 高子

なめくぢの一筋光る行方かな      海野 正男

這い這いの嬰の笑顔や立葵       宮崎 惠美

瑠璃蜥蜴反身の腹に日を浴びし     後藤 桂子

研ぎたての包丁で割る西瓜かな     生田 章子

祭笛吹きに帰れと能登便り       海野 正男

花びらに玉のしづくや花菖蒲      小林 れい子

 

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 主宰選評動画です。

ご覧ください。

俳誌「雉」7月号から

主宰俳句

       鮎     田島 和生

大琵琶の鮎ひらひらと釣られたる

釣り上がるいといとけなき鮎の口

みづうみの雨見え来る植田かな

遠嶺まで田水明りの越の国

浜大根沖の立山ほの白き

磯釣の子へ老鶯の幾たびも

   岡山城 2句

音たてて烏城の門へ椎落葉

新茶汲むまろき茶山をまのあたり

 

 

     同人作品評(5月号)   大西 朋

 

立春大吉竹の器に酒をくむ   青木 和枝

 暦では立春といえどもまだまだ寒いこの季節。それでも春が来たと思えばどことなく気持ちが浮き立つ。そんな中、何かよいことがあったのだろうか。竹の器に酒をくんで飲んだ作者。ほのかな竹の香にお酒も進みそうである。

 

梅匂ふ立山白く輝けり   小林 れい子

 どの山々も雪を被れば美しいが、立山のような連峰であれば視界に入りきらないほどのスケールで迫ってきて見事であろう。そして早春の日に輝き、よりその白さを増す立山。その景色を眺める作者の周りに梅の香りが漂い、赤と白の遠近の対比もまた美しい。 

 

 

     新 同 人 作 家 競 詠

 

     立山連峰   生田 章子

新雪立山全容巍巍として

雪嶺の色を変へつつ初日の出

迫り来る立山連峰寒に入る

まなかひにしろがねの山春菜摘む

陽炎に白き立山動く如

立山の宙に浮きゐて冬隣

立山の裾青々と春の風

 

     万葉の海   辻江 恵智子

単線の終着駅や初つばめ

背戸に干し春の小鰯錫色に

乳銀杏四方へ芽吹きの古刹かな

會遊の万葉の丘麦青む

春の日のきらめき蛇行射水

二上山(ふたがみ)へ段々畑すみれ草

万葉の浜辺に遊び跣の子

 

 

     紅頬集 秀句佳句   田島 和生 主宰

 

越の風野に吹き渡り花りんご   福江 真里子

 まだ雪を残す立山連峰から拭き降ろす風が野を渡り、りんご園の薄赤い五弁の花を震わせている。野を吹き渡る越の風という大景と、小さなりんごの花を対比させて詠み、大変気持ちのいい作品である。

 

花嫁の髪に挿しをり赤き薔薇   志賀 理子

 白いイブニングドレスを身にまとった花嫁の髪に薔薇を挿す。それも真っ赤な薔薇。前句に〈花嫁の髪結ふ母や風薫る〉があり、薔薇を挿すのも母らしく、結婚する娘を美しく飾っているのである。

 

以上、俳誌「雉」7月号より抜粋いたしました。

 

 

青葉風

石黒哲夫先生をお送りしました。

俳句人生60余年、

思い出が尽きません。

 

お亡くなりになる10日前に、

お詠みになった俳句が披露されました。

 

新緑や相馬御寮の馬がゐる

花嫁の馬ゆく相馬青葉風

 

この青葉の季節には、

父を思い出してくださいと、

ご子息さまのご挨拶でした・・・

 

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「雉」金沢句会にて     2012年2月

俳誌「雉」6月号から

主宰俳句

      田植水   田島 和生

湧水の蝌蚪の揉み合ひ盛り上がる

巣箱から小鳥一転森に消ゆ

空にまだ残るとんびや春茜

腹這ひて茅茸くひとり遅日かな

昼蛙石屋に仏また生れ

鴨の子の集ひて散つてかしましき

石亀のまはりへ鳴いて小鴨かな

湖岸までいつしか満ちて田植水

 

 

     同人作品評(4月号)   大西 朋

 

夢聞いて成人の日の着付けかな   佐瀬 元子

 成人の日。着付けをしながらの会話は将来の夢の話。希望に満ち溢れた日に相応しく、頼もしい限りである。着付けの最後にはぽんと帯を叩く。新たな門出が眩しい。

 

せりなずなすずなすずしろピザの上   海野 正男

 七草といえば粥かと思っていたらピザの上に。考えてみればピザの上にのっているバジルはハーブ。七草も日本のハーブである。合わないわけがなく、ピザソースに七草とチーズの組み合わせはきっとおいしいに違いない。また七草がピザ釜の中でチリチリとしてゆく様が見え、この句の口ずさんでいて何だか楽しくなってきた。

 

 

     紅頬集の秀句佳句   田島 和生 主宰

 

蝶生まる絹の靴下脱ぐ如く   古西 純子

 蝶々が青虫、芋虫をへて蛹となり、羽化するとき、まるで絹の靴下を脱ぐようである。透き通った絹の靴下を脱ぐと見るのは大胆な比喩だが、美しい蝶々を賛美した表現で、なるほどと思わせる。作品は詩情に溢れ、個性を感じさせる。

 

以上、俳誌「雉」6月号より抜粋いたしました。