自句逍遥十句 16 石黒 哲夫
父の日や麻姑の手もちて背中かく
雪掻きの人らへ鳶が笛流す
背もたれの柱なき家よもぎ餅
梅干の好きな少年日焼せり
燕くる町に廃れし湯屋餅屋
垣根なき麓暮しや秋の風
鴨じぶや蓮如たたふる人つどふ
懸巣鳴く和尚の墓に茶碗酒
いわし雲夫婦で磨く集魚燈
曲水の七瀬七照り梅匂ふ
同人作品評(五月号) 中村 与謝男
癌封じの笹酒飲みて花の寺 石黒 哲夫
笹の成分に癌を抑える効能があるという話を聞いたことがある。神妙な顔で飲まれておられるのであろうか。花の寺が上五中七を柔らかく受け流して、巧み。
餅花を挿しある安芸の飯屋かな 小室 登美子
都市の華やかな習俗の餅花ではない。壬生の花田植など、故習の残る安芸の生活に密接な営みであることが句の厚み。地貌を捉えて手堅い。
紅頬集 秀句佳句
若葉風走り根多き綾子句碑 宮崎 惠美
その他、「各地だより」において、
度山 紀子さんが「追憶の地・光久寺」をお書きです。
以上、「雉」7月号より抜粋いたしました。