同人作品評(7月号) 中村 与謝男
落慶の堂へつばめの飛び込めり 中山 ち江
落慶法要のさなか燕が飛び込んだのだ。句はそれだけを述べるが、心の弾みと祝意が鮮やか。
水玉の木綿裁ちたる立夏かな 谷口 和子
夏らしい水玉模様の木綿を鋏などで裁つのだろう。裁つ音が聞こえてきそうな一句だが、句の巧拙を分けているのは、立夏の季語。かな止めも確か。
皮靴の埃うつすら花疲れ 福江 ちえり
季語が現代と密接な形で詠まれている。うつすら埃を被った皮靴は、そのまま日常の些事すれすれの愁いと、かすかな疲労を象徴している。
頬紅集 秀句佳句
禰宜の声風に奪はれ山開き 度山 紀子
短夜の身に残りたる船の揺れ 宮崎 惠美
その他、野澤 多美子 様 初投句で3句入選でした。おめでとうございます。
以上、俳句誌「雉」9月号より抜粋致しました。