師の墓を万余の墓を白雨かな 田島 和生
同人作品評(8月号) 国枝 隆夫
一つ灸受く百相の貌並び 石黒 哲夫
漢方の民間療法として灸治療は今なお健在なのだろうか。熱さに耐えている貌はそれこそ百面相なのだろう。〈百相の貌並び〉の観察に臨場感がある。ひょっとしたらこの百相に作者の貌も入っているに違いない。
瓦立て青田の水を加減せり 吉田 泰子
最近の水田は治水工事のおかげか、水栓をひねるだけで水を引き込むことが出来る。この句には自然に根付いた水田が見える。水口に差し込む瓦一枚で水田を調節する生活の知恵と伝統が息づいている。
頬紅集 秀句佳句
寝たきりの父の鎖骨に汗溜まる 海野 正男
〈空蝉の蔓に絡みて漂へり〉もよく写生し、いい句である。(田島 和生 主宰)
以上、俳句誌「雉」10月号より抜粋致しました。
同人作品評は、今月号より国枝 隆夫 先生(「伊吹嶺」 インターネット部長)のご執筆です。宜しくお願い申し上げます。
また、先月号までの半年間、お世話になりました中村 与謝男 先生(「幡」)には、心より御礼申し上げ、これから更なるご活躍をお祈り申し上げます。
俳句誌「雉」北陸支部