主宰俳句
寝待月人はかすかに寝息せる 田島 和生
同人作品評(9月号) 武藤 紀子
薔薇垣に一人ひろって園児バス 吉田 泰子
こういうなにげない句が好きだ。町を廻って子供を乗せてゆく幼稚園のバス。薔薇の垣根のある家の前でも一人乗せてゆく。先生がバスから降りてきて、「おはようございます」と子供と挨拶している。見送りに出ていたお母さんがにこにこしている。薔薇の花の良い香りがしている。
作家論(11)
石黒哲夫の人と作品 ―「犀星文学賞」の金沢暮し― 水野 征夫
自選句(抜粋) 石黒 哲夫
猫を抱く女が河岸に遠花火
康夫忌の過ぎ欣一忌鳥渡る
いつ来ても迷ふ墓域や花万朶
兼六園
曲水の七瀬七照り梅匂ふ
野火匂ふ駅に目薬さしをれば
鮎料理食つて睡魔に襲はるる
いわし雲夫婦で磨く集魚燈
湯豆腐に一会の老いの破顔かな
泳がせて小鮒売りゐる歳の市
癌封じの笹酒飲みて花の寺
頬紅集 秀句・佳句 田島 和生 主宰
厨からおつけの匂ひ今朝の秋 大上 章子
「今朝の秋」は、秋の気配を感じさせる立秋の朝。部屋にいたら、台所からおいしそうな「おつけ」(おつゆ)の匂い。季語の爽やかな「今朝の秋」にふさわしい。
以上、俳誌「雉」11月号より抜粋いたしました。