新年 明けまして おめでとうございます
本年もどうぞ宜しくお願い申し上げます
田島 和生 主宰俳句
椎の実の蘚苔深く沈みけり
曽遊の坂ころがりて散紅葉
沢木欣一先生十三回忌
面影の師のこゑ掠れ紅葉狩
同人作品評(11月号) 武藤 紀子
緑の孤大きくゑがきばつたとぶ 佐藤 尚夫
まったくこの通りの景をいつも見ているのだが、なぜかこんなに簡単に読むことができない。どうしてなんだろう。格好良く詠もうとするからだろうか。バッタのまわりの物も一緒に詠もうとするからだろうか。
笹の葉の乾く匂ひや星祭 青木 和枝
七夕と笹の匂いはつきもので、そう珍しくもないありふれた句のように思えるのだが、何処かニュアンスがあってひっかかる句だ。笹にくくり付けた短冊や七夕竹が揺れるなどはよく詠まれるが、笹の葉の乾く匂いは新鮮だった。
蓬莱島育ちの蛇の泳ぐかな 石黒 哲夫
大寺院などの回遊式日本庭園の池には、よく蓬莱島と名付けられた小島がある。この蛇はこの島生まれなのだ。小さな島だから、移動するときは池を泳ぐことになる。見物人は大騒ぎだ。
頬紅集 祝 巻頭 海野 正男 さん
巻頭作品5句
芋の葉をこぼるる露の連珠かな
蓮の葉に溜まれる雨の澄みにけり
袋小路金木犀の香に満つる
花八手由緒札立つ百姓家
鵙猛る石動山の伽藍跡
おめでとうございます。
これから、益々のご活躍をお祈り申し上げます。
頬紅集 秀句・佳句 田島 和生 主宰
花八手由緒札立つ百姓家 海野 正男
萱葺の百姓家の前に、時代や家の間取りを書いた由緒札が立つ。近くに八手が白い球を集めたような花を咲かしている。作者は金沢在住なので、加賀藩時代の旧家を移築した金沢湯涌江戸村かもしれぬ。素朴で、簡素な百姓家に花八手がふさわしい。過不足のない手堅い表現がいい。
稲刈りて村いっぱいの日の匂ひ 生田 章子
村は稲刈りの真っ最中である。秋晴れで稲のいい匂いがしているのを「日の匂ひ」と捉え、感性に溢れている。一茶の句の〈雪とけて村一ぱいの子ども哉〉に、表現がやや似ているが、内容も違い、詩情があっていい。
猿ばかり渡る吊橋紅葉滝 山岸 昭子
深い渓谷に架かる吊橋を猿だけが渡っている。紅葉が彩り、滝が落ちる絶景の場所というのに、猿ばかり渡るというのは何ともおかしい。「紅葉滝」という美しい言葉で、俗にならず、詩情を深めている。
柿紅葉胸をつつけり露店風呂 林 喜美子
露天風呂に浸れば、散った柿紅葉が胸をつつく。野生味にあふれ、色鮮やかな柿の葉と女性の胸の取り合わせがやや艶っぽく、美しい景である。
子の帽子母の帽子に赤とんぼ 野崎 郁雄
秋の澄んだ空に舞う赤とんぼが、野に遊ぶ子どもや母親の帽子に止まる。帽子を二回繰り返し、調べもいい。母子の楽しそうな声まで聞こえてきそうな楽しい作品。
以上、俳誌「雉」新年号(平成26年)より抜粋致しました。