主宰俳句 田島 和生
谷若葉朝のブレンド車窓にて
居酒屋の裏のたそがれ牛蛙
チョッキ着て佐藤先生薔薇盛り
中山純子さん 逝去
朝蝉の声の雲間に逝き給ふ
綾子逝き純子逝き蝉鳴きしきる
同人作品評 (7月号) 中田 尚子
合格子学舎を見上げ深呼吸 小林 亮文 合格発表のあと、学校に戻って担任の先生に結果を知らせようとしている生徒、を想像してみました。喜びをかみしめながら、通いなれた学舎を見上げます。今日は何だか特別に見えてしまいます。深呼吸をすると、じわじわと実感がこみ上げてきて。先生はなんと言って喜んでくれるでしょうか。
一方、報告を終えて帰る情景という観賞も可能です。すると、また少し違った味わいがでてきます。
行きずりに花の筵へ誘わるる 度山 紀子 「花の筵」は、花見のための筵ということでしょう。この省略が的確で、一句に華やかさを添えています。誘われて、作者はきっとこの筵に座ったことでしょう。
紅 頬 集 秀句・佳句 田島 和生 主宰
暑き日の発熱の子のふるへかな 宮崎 惠美
こどもが熱を出し、悪寒で震えている。冬の寒さで震えているのは当たり前だが、「暑き日」と詠み、実感がある。幼子の病気を心配する気持ちもよく感じられ、異色の秀作である。
ぐんぐんと空に雲湧く夏木かな 野崎 侑雄 生い茂った夏の木々。空には入道雲だろうか、大きく湧きあがる。「ぐんぐんと空に湧く」と平易で力のこもった表現をし、下五に「夏木かな」とさりげなく置いた点も大変巧みである。
一山に滝六条の響き合ふ 後藤 かつら
一つの山に六筋の滝が落ちる。滝はごうごうと響き合い、山全体が響くようである。大景の「一山」という表現によって。俳諧味もあり、堂々とした作である。
新同人競詠では、宮崎 明倫さんが「兼六園逍遥」と題して、度山 紀子さんが「マロニエの花」と題して、寄せていらっしゃいます。
以上、俳誌「雉」9月号より抜粋いたしました。