「雉」北陸地区のブログ

「雉」句会の活動を公開しています

俳誌「雉」11月号から

主宰俳句
       秋 津 島       
                  田島 和生

    大根のうすうす蒔かれ朝の月
    すぐそこに飛沫光りて鴨来る
    初鴨の方へ水辺の青けむり
    触れ合つて色を深めて曼珠沙華 
    反故焚いて焦げし土くれ曼珠沙華
    がちやがちやの崖にちかぢか夜明星
    小鰯の甘煮一品安芸の国
    待宵やいくさなき日の秋津島

 
          同人作品評(9月号)   山西 雅子
刃物屋に光る種々雲の峰   太平 栄子
 刃物屋には包丁を始めとするくさぐさの刃物が並べられています。店先にある比較的小さな日用品はきらりと光り、店の奥にゆくに従って、貴重で大型の刃物がやや薄暗いガラスケースの中で鈍い光を放っていたりするのでしょう。「刃物」と総称しましても、材質や部分、置かれている場所により輝きが異なります。それらの光から目を上げて大空を仰ぐと空に聳える夏雲の荘厳で圧倒的な光……。印象鮮明な句です。 

緑さす骨清窟の壁の罅   福江 ちえり
 骨清窟は、哲学者西田幾多郎の書斎です。骨清窟の名は、室町時代の禅僧寂室の詩の一節「死して巖根に在れば骨もまた清し」に依るとのこと。平成十五年に国の登録有形文化財に指定され、現在は石川県の西田幾多郎記念哲学館内に移築されています。
 「壁の罅」は書斎の中の壁に入った罅のことでしょう。窓辺に木々が茂り始めた瑞々しい季節、「骨清」という語が喚起する白のイメージと木々の緑が相俟って、格調高い句となっています。
 

          紅頬集の秀句佳句     田島 和生   主宰

秋うらら天守閣より伊予の国   宮崎 惠美
 秋晴れに、松山市松山城天守閣に登れば、町の風景を一望に見渡せる。まるで昔の伊予の国を思わせるようで、「天守閣より伊予の国」とずばりと詠み上げる。無駄のない表現がいい。子規の〈春や昔十五万国の城下哉〉の堂々とした句を思い出す。

以上、俳誌「雉」11月号より抜粋いたしました。