主宰俳句
海鳴り
田島 和生
国宝の甍をしずる雪けむり
福相の盧山寺の僧雪かけり
弥陀仏を背に名園の雪見かな
悴みてかがみ鈴振る弁天社
浮き寝鳥向きかふるとき日を返す
海鳴りや旅の蒲団の胸を圧(お)す
雪解水軒より苔へ継ぎ目なし
十指組む朝餉の祈り余寒かな
紅 頬 集 秀句・佳句 田島 和生 主宰
裘デッキで交はす赤ワイン 後藤 かつら 裘は「かわごろも」と読む。皮衣、つまり毛皮で作ったジャンパー。裘と来れば、少し気も荒々しい人たちを想像しそうだが、なんと船のデッキで赤ワインを飲み交わしている。意外性に俳諧味もあり、大変面白い。
絵双六上がりて母は厨へと 野崎 郁雄 さいころを転がし、出た目の数で駒を進める絵双六は、昔ながらの楽しい正月の遊戯。料理の準備の合間を縫って母親も加わるが、「あがり」になると、すぐ台所に戻る。「母は厨へと」の短い表現に、いつもと変わらぬ母親の忙しい姿が描かれ、味わい深い。