「雉」北陸地区のブログ

「雉」句会の活動を公開しています

俳誌「雉」3月号から

主宰俳句

       海鳴り 
             田島 和生

   国宝の甍をしずる雪けむり
   福相の盧山寺の僧雪かけり
   弥陀仏を背に名園の雪見かな
   悴みてかがみ鈴振る弁天社
   浮き寝鳥向きかふるとき日を返す
   海鳴りや旅の蒲団の胸を圧(お)す
   雪解水軒より苔へ継ぎ目なし
   十指組む朝餉の祈り余寒かな
   

    紅 頬 集   秀句・佳句      田島 和生 主宰
裘デッキで交はす赤ワイン   後藤 かつら 裘は「かわごろも」と読む。皮衣、つまり毛皮で作ったジャンパー。裘と来れば、少し気も荒々しい人たちを想像しそうだが、なんと船のデッキで赤ワインを飲み交わしている。意外性に俳諧味もあり、大変面白い。

絵双六上がりて母は厨へと   野崎 郁雄 さいころを転がし、出た目の数で駒を進める絵双六は、昔ながらの楽しい正月の遊戯。料理の準備の合間を縫って母親も加わるが、「あがり」になると、すぐ台所に戻る。「母は厨へと」の短い表現に、いつもと変わらぬ母親の忙しい姿が描かれ、味わい深い。