「雉」北陸地区のブログ

「雉」句会の活動を公開しています

俳誌「雉」6月号から

主宰俳句 
        青 麦
                  田島 和生 主宰

   青麦の風のつやめき安土かな
   虚子の忌や煙雨隠れの大比叡
   富士の嶺は青く翳りて春がすみ
   鳥の恋枝々はねてかまびすし
   石椅子に触れで初蝶飛びにけり
   蝌蚪わつと生まれ尾を振る雨模様
   奪衣婆(だつえば)の膝に触れゐしあたたかし
   大琵琶の奥の灯りて花の雨


        同人作品評(4月号)     中村 雅樹

柿葺く槌音に春来たりけり   吉田 泰子 柿とは屋根を葺くための薄い木の板。檜などで作られるようです。この一句、社の建築か、あるいは冬の雪で傷んだ屋根の修理を詠んだものと理解しました。柿を釘で止めているのでしょう。あるいは竹の釘かもしれません。その軽やかな槌音が、春の到来を告げているのです。

芸妓らの笛や踊りや鬼やらふ   石黒 哲夫
 一般の家庭の豆撒きとは様子が違うようです。芸妓らによるにぎやかな様子が目に浮かんできます。鬼を追い出すどころか、笛や踊りによって鬼を呼び込んでいるかのようです。鬼も一緒になって浮かれているかのような、面白さを感じました。これはいったいどこの鬼やらいでしょうか。

セーターに穴あり指を差し入れむ   海野 正男 これは面白い句。穴が開いていると、無意識のうちに指を入れたりします。その穴がいっそう大きくなったりします。さてこの句では、「指を差し入れむ」と、少しひねった表現となっています。ここに小さなゆとりが生まれました。自分のことでありながら、他人事のように詠んでいるところも面白いと思いました。

        
        「雉」ネット俳句入選句   ★今回も、北陸地区からたくさんの入選作品がありました。
    北陸地区の方の入選句をご紹介いたします。

大前 貴之 選〈入選〉 さへづりの鳥の名あてる散歩道   潟渕 恵美子
     あさつきの香る味噌和へ食卓に   西野 可代子
     病める身の背筋正して春ショール  福江 真子 
     すれ違ふ子供がほめる山桜     北野 陽子 

佐保 光俊 選
〈特選〉 さへづりの鳥の名あてる散歩道   潟渕 恵美子

〈入選〉 襟巻をくるくるたたみお念仏    吉岡 ユキ 
     病める身の背筋正して春ショール  福江 真子 
     春風や池の細波きらめいて     金山 多美子
     すれ違ふ子供がほめる山桜     北野 陽子 
     花吹雪玄関口に入りけり      北野 陽子

    ★おめでとうございます。次回も期待しています。
     どしどしご応募くださいね。お待ちしています。


         紅頬集 秀句・佳句     田島 和生 主宰
雪晴れや湯気ふはふはと合掌家   松本 よね子 白川郷・五箇山の合掌造り集落の光景らしい。大雪が止み、目が覚めるように晴れ上がった朝、合掌造りの茅屋根から湯気が上がっている。「湯気ふはふはと」の表現がいかにも軽やかで面白い。

★おめでとうございます。

以上、俳誌「雉」6月号より抜粋いたしました。