主宰俳句
遥かなるもの
田島 和生
遥かなるものへ声張り朝の雉
朝日差ひゆつと風切る燕かな
紅つけてあち見こち見と豆の花
蓮芽吹く寺に七つの捨火鉢
夏鴨の一羽は逸れて二羽翔る
風にちり小鳥にこぼれ白卯木
小海老のせ安芸も奥なる祭鮓
草の絮舞ふや落日刻々と
同人作品評(5月号) 中村 雅樹
花馬酔木縄を解かれて揺れてをり 佐藤 尚夫
先日、浄瑠璃寺を訪ねました。ちょうど馬酔木の花盛りで、なかなか趣のあるお寺でした。秋櫻子の句を思い出しました。ということで、わたしはこの句に接して、ただちに浄瑠璃寺を思い起こしました。さて、「縄を解かれて」とは、どのような状況なのでしょうか。そこに至る事情はまったく述べられていません。しかし結果だけは、「揺れてをり」とはっきりとしています。俳句は経過を詠むのではなく、ぶっきら棒に結果を詠むものと説く人がいますが、この一句はまさにそのような句です。
あたたかや伸びては縮む紙の笛 谷口 和子
そう言えば、このような玩具がありました。息を吹くと細長い紙の管が伸び、息を吸うとくるくると巻くのです。このような紙の笛を思い浮かべたとき、「あたたかし」という季語が効いていると思いました。
エッセイ 「金沢通信」 海野 正男 さんの連載が始まっています。 全6回の予定で、今回が2回目です。
北陸新幹線が開業し、賑わう金沢の今昔をお楽しみください。
大好評「雉」ネット俳句
今回もたくさんの方のご応募がありました。
北陸の方々の入選も目立ちます。以下に、北陸の方の入選句をご紹介いたします。
大前 貴之 選
特選 万華鏡のごとくに寄りし花筏 潟渕 恵美子
乗り継ぎの駅にて食ぶる鯖の鮨 藤井 薫
筬欄間光の透くる夏座敷 金山 多美子 入選 用水の流れの速し風薫る 福江 真子
車椅子にガラス越しなる八重桜 吉岡 ユキ
簀虫籠の中へ吹き抜け春の風 松田 文子
ゴンドラが緑の山を登りゆく 盛一 紀子
佐保 光俊 選
特選 万華鏡のごとくに寄りし花筏 潟渕 恵美子 入選 簀虫籠の中へ吹き抜け春の風 松田 文子
用水の流れの速し風薫る 福江 真子
乗り継ぎの駅にて食ぶる鯖の鮨 藤井 薫
ゴンドラが緑の山を登りゆく 盛一 紀子
開店の花屋にもらふ薔薇の花 盛一 紀子
「雉」ネット俳句は、会員の方もご応募いただけます。
是非、雉ホームページよりご投句ください。お待ちしております。
以上、俳誌「雉」7月号より抜粋いたしました。