「雉」北陸地区のブログ

「雉」句会の活動を公開しています

俳誌「雉」12月号から

主宰俳句
         月の湖
                  田島 和生

     畦草の月待ちをれば匂ひけり
     月光の底のつぶらな鯰の目
     ニュートリノ月の湖にも降りゐたる
       林 徹 先生はかの世
     月白を先生来ませ大吟醸
     芒原いたち一跳ねして消ゆる
     百日草いつもの蝶の来てをりぬ
       祝・山田初枝句集『白桃』
     虫愛づる汝を囃して虫のこゑ       祝・青木和枝句集『白山茶花
     行く道や白山茶花の香り来し

         同人作品評(10月号)     長嶺 千晶

水甕を倒し水替ふ梅雨の明   太平 栄子
 水甕に溜まった水をいったん捨ててまた新たに水を溜める。それだけのことなのだが「水甕を倒し」の描写で溢れ出る濁った梅雨の雨水までが目に浮かんでくる。ようやくそんな作業のできる梅雨明の晴天を喜んでいるのだろう。

釈尊の寺のうしろの大百足   谷口 和子
 お釈迦さまをお祀りする寺の裏に何と大百足が現れた。殺生を嫌うお寺でも大捕り物が始まりそうである。一句の表現に大らかな民話の語り口の面白さがあり心惹かれた。


         第24回雉賞発表雉賞  新本 孝子  「水の音」
    浜田 千代美 「秋しぐれ」

次席  二宮 英子  「渡良瀬の風」

佳作  天野 桃花  「草茂る」
    依田 久代  「御開帳」
    神田 美穂子 「ジョージア
    今田 舞子  「出雲路

    おめでとうございます。


         紅頬集 秀句・佳句     田島 和生「雉」主宰
三味の音や川面に歪む望の月   後藤 かつら 作者は金沢の人。川付近で三味線が聴こえる所と言えば、浅野川左岸の主計(かずえ)町かも知れない。川沿いに歩けば、お茶屋から流れる三味線の音色に合わせるように、満月が水面に揺らいでいる。「川面に歪む」がいかにもきらびやかな月を思わせる。鋭い写生眼で、佳句に仕上げている。

大夕焼タンカーの影遠ざかる   松本 よね子 海の夕焼けは、天を覆い尽くすばかりである。夕焼けの中を今しも大型船のタンカーがゆっくり進む。その影はだんだん遠ざかる。タンカーに焦点を当てて、大景を美しく詠み上げている。

裏返る茶屋の幟やとろろ汁   宮崎 惠美 静岡の丸子宿の古民家だろうか。「とろろ汁」と書いた幟が風にあおられ、裏向きになってなびいている。その幟を見ながら、店に入る。秋風で裏返ってなびく幟。とろろ汁はおいしく、旅心を深めたかも知れない。

子持鮎化粧塩して焼かれをり   亀田 次郎
 鰭などに白く化粧塩をまぶした子持ち鮎煙を上げて、焼かれている。子持ち鮎の「子持ち」、化粧塩の「化粧」という言葉から、少し憐れを誘う。「焼きにけり」ではなく、「焼かれをり」という客観的な表現で妙味豊かである。

以上、俳誌「雉」12月号より抜粋いたしました。