主宰俳句
萩の筆 田島 和生
萩の筆自在にはねて筆始
冬鷗並んで白きふくら胸
にほどりのうつらうつらと春隣
原爆に果てしこの町落葉掻き
あかあかと被爆地を掘る寒さかな
京都動物園 三句
象の脚おのが影踏む春近し
ライオンの地声欝々枯木立
抱き合って猿は毛玉に寒日和
同人作品評(1月号) 長嶺 千晶
五箇山や炉明りにのむ薬草茶 小室 登美子 平家の落人伝説がある越中五箇山の合掌造りは世界遺産になった。「薬草茶」には質実な暮らしぶりと代々伝わる生活の知恵が感じられる。寒さの厳しい土地柄の「炉明り」にほっと心和む詩情と温もりがある。
紅頬集の秀句佳句 田島 和生 主宰
大根焚男ばかりの外竈 後藤 かつら お寺の報恩講なのでの大根焚きの風景だろうか。庭先に竈を据え、大釜で大根を炊いている。世話人が「男ばかり」という点がおかしい。ほとんど食べるのは女性だろう。ユーモアに溢れ、楽しい作である。
大空に立山浮かぶ焚火かな 野崎 郁雄
遠景に立山、近景に焚火。俳句の骨法をよく生かし、風景も美しい。大空の立山が、焚火の炎に揺らいでいるようにも見える。
以上、俳誌「雉」3月号より抜粋いたしました。