主宰俳句
シリウス
田島 和生
冴え返る青きシリウス目の高さ
寒禽の糞(まり)に真珠のやうなもの
囀やふつくら飯に割り卵
てんとむし睦む細かき脚遣ひ
暮れぎわは暮れぎわのこゑ春雀
番ひ鴨間合保ちて帰りゆく
茶畠へ建国の日の放ち鶏
雄鶏のまはり雌鶏山笑ふ
同人作品評(2月号) 津森 延世
海へ日のあかあかと落つ欣一忌 石黒 哲夫
「風」主宰沢木欣一の晩年の作〈夏の日の己れゆさぶり落にけり〉と呼応するかのように落日を捉えている。今は亡き師がそこには在り在りと見えている。師系の精神は脈々と、「あかあかと」受け継いで行かれる。
だるま彫る鑿百本や鵙高音 小林 亮文 本彫をしている匠のひたすらな姿が描写されている。彫師の自負が達磨の姿となってゆくかのように…。精神の世界が即物具象によって端的にあらわされている。折しも、そこには「鵙」が喝と励ましている。
小春日や山畑に置く椅子ひとつ 山岸 昭子 山畑にひとり、たのしむように働く女性が見える。一服される時の「椅子」が、作者の世界をゆたかにしている。至福の時が、そこには流れている。佇まいが在り在りとして惹かれる。
紅頬集 秀句佳句 田島 和生 主宰
寒行や声あげ手あげ滝弾く 生田 章子
修験者が白衣をまとい、寒行で滝の水を浴びる。その様子を「声あげ」「手あげ」「滝弾く」と順序を追ってリズム良く詠み、修験者の様子も目に浮かぶようである。
以上、俳誌「雉」4月号より抜粋いたしました。