主宰俳句
白 山 田島 和生
白山はいま青嶺なり雲高し
遠嶺まで揺れゐて加賀の青田波
曾遊の街を片蔭拾ひゆく
富山・大境洞窟住居跡 2句
祖(おや)たちの暗き岩室滴れり
滴りの岩へ口つけ黒揚羽
炎天へうち広げ干す魬(はまち)網
裏を向き傾ぎいづこへ海月かな
玫瑰の残花に旅心にはかなる
同人作品評(7月号) 津森 延世
木の芽和みな骨董の欠け茶碗 海野 正男 代代受け継いでこられた茶碗類が多くあるようにも思える。欠けていても「骨董」であるから貴重である。作者の心のうちが想像できてゆかしい。ぶっきら棒な言い方がそのものを見せている。〈ぐい呑を小鉢代りの木の芽和 草間時彦〉とはまたちがった味わいがある作品。
〈頬紅集〉 祝 巻 頭 後藤 かつら さん
巻頭作品 城垣の御紋をなぞる蝸牛
万葉の海の青さや夏兆す
肝煎の白洲乾けり麦の風
種物屋主人円座の座りくせ
荒梅雨や麓に老の獅子を彫る
おめでとうございます。
これから、益々のご活躍をお祈り申し上げます。
紅 頬 集 秀句佳句 田島 和生 主宰
城垣の御紋をなぞる蝸牛 後藤 かつら 作者は金沢在住だから、百万石加賀藩の金沢城を詠んだ句であろう。城壁の石には寄贈先の藩の御紋が刻まれ、見れば蝸牛が紋をなぞるようにに這っている。城の盛衰とはかかわりなく、蝸牛は石垣の御紋を這う。丁寧に写生し、妙味豊かである。原句「石垣」は「城垣」と表現したほうがいい。
以上、俳誌「雉」9月号より抜粋いたしました。