主宰俳句
ははきぐさ
田島 和生
耳裏は秋の風鳴る城址かな
城壁のはたはた飛べば峡の空
ひやひやと四高旧舎の床軋む
蟋蟀の吾と目が合ふ穴の口
蜘蛛の巣のだんだん撓み稲埃
観音へ飛びけり加賀の稲光
冬瓜を赤子抱きして村外れ
ぬくさうな毬のもみづるははきぐさ
同人作品評(9月号) 山中 多美子
ゴーヤ蔓日除けネットの天辺へ 度山 紀子 鮮やかなゴーヤの緑のカーテン。夏は涼しい日蔭を作ってくれる。黒い日除けネットの天辺まで這い出した蔓の逞しさ。
杜若雨の名残りの雫かな 海野 正男 杜若といえば、在原業平が東下りの折に詠んだ「唐衣きつつなれにしつましあればはるばるきぬる旅をしぞ思ふ」を思い出す。「かきつばた」の五文字の韻を踏んでの作。名残りの雨が、杜若を訪ねた旅人の衣を濡らしているようで心憎い。
祝 巻頭 古西 純子さん〈巻頭句〉
白山とつく花ばかり花野道
振り返り仰ぐ白山花野径
雲の影広がりゆけり大花野
秋の嶺豆粒ほどの人見ゆる
鬼やんま水面びしびし叩きけり
おめでとうございます。
これから、益々のご活躍をお祈り申し上げます。(北陸地区一同)
紅頬集 秀句佳句 田島 和生 主宰
鬼やんま水面ぴしぴし叩きけり 古西 純子 鬼やんまは体調約九センチ、と大きいとんぼ。雌が水辺で産卵しているのだろうか、盛んに尾で水を叩いている。威勢よく産卵する光景を「ぴしぴし叩きけり」と、一気に詠み下している。敏捷で大粒の目まで想像でき、妙味豊かな作である。
以上、俳誌「雉」11月号より抜粋いたしました。