主宰俳句
実千両 田島 和生
日は高く寒木瓜の花うひうひし
曲がるたび山茶花の赤神楽坂
身籠の腹をなでをる聖夜かな
あり余る幸さながらの実千両
万両の揺るる木曽塚芭蕉塚
実万両芭蕉の墓をそばへかな
目薬のけさの一滴比良の雪
林徹先生
先生の夢に覚めたる大くさめ
同人作品評(12月号) 山中 多美子
長病みの気分転換レース編む 小室 登美子
長病みの人に大切なのは気分転換。レース編みは裡に籠りがちな心を解き放ってくれる。好きな色で、好きなように編む。自在な指の動きが生み出す自在なかたち。仕上がりが待ち遠しい日々。
車椅子の母を囲みて月仰ぐ 小林 れい子
今年のスーパームーンは11月14日であった。地球に最も近づくので、とても大きな月だ。車椅子の母を囲んでの月見とはなんと和やかな。一日一日、また一瞬一瞬の幸せな家族のかたちが「囲みて」なのだろう。
木犀の香りとなりて今朝逝けり 中山 ち江
死を悼んで、それでいて爽やか。木犀の香りとなったばかりの人。その生涯を惜しむ気持ちが惻惻と伝わってくる。生と死の隔たりが、遥かな思いを抱かせる。
紅頬集の秀句佳句 田島 和生 主宰
照紅葉ガラス越しなる湯舟かな 北野 陽子
輝くような紅葉をガラス越しに眺めながら、大きな湯舟に浸かり、心身ともに大自然に溶け込んでいる。いかにも幸せそうである。
胎動にそつと手を置く柚子湯かな 後藤 かつら
以上、俳誌「雉」2月号より抜粋いたしました。