「雉」北陸地区のブログ

「雉」句会の活動を公開しています

俳誌「雉」6月号から

主宰俳句
      湖匂ふ        田島 和生白木蓮ゆれて夕べの湖匂ふ
初蝶と小道に出会ひ阿(あ)と言えり
垣根よりだれに待つとなく蕗の花
青頸の鴨の分けゆく花筏
人来ては嬰(やや)の頬撫で花筵
高嶺空落花きらきら飛びゆけり
荒神の御輿次々春埃
神輿舁く漢の裸身昼桜

     同人作品評(4月号)   平田 冬か

松炭の火の粉高々初鞴   青木 和枝 鞴は高温を作り出すための送風装置。これを使って作業をする鍛冶職や刀匠の仕事初めを「初鞴」という。松炭は他の炭に比べ空気の通りがよく火力が強いと聞く。仕事初めの厳粛な雰囲気や意気込みが「火の粉高々」から伝わる。

箍締めて正月を待つ桶太鼓   小室 登美子
 桶太鼓は和太鼓の一種だ。普通の桶を太鼓に代りに叩くものではない。作りも形も桶に似てはいるが、神社仏閣の正月の儀式や祭にも使われる太鼓だ。その箍が緩んでいてはよい音が出ない。正月を迎えるにあたって太鼓を点検し、その箍を締め直すのも神社の年用意の一つだ。

さよならと雪を投げ合ふ下校の子   山岸 昭子
 雪国の下校風景ならこういう情景がありそうだ。下校の別れ道に来て、「また明日」と言いながら手近の雪を丸めて投げ合い、それぞれの道を帰るのだ。相手に命中させるのでなく、別れの言葉の代わりなのだ。雪国ならではの下校風景が微笑ましい。

凍鶴のかたまりゐしも相寄らず   海野 正男
 厳しい寒さに、片脚立ちで首を翼の間に挟んで動かないような姿勢の鶴を「凍鶴」という。群れの鶴の各々が、凍鶴の姿になりながらも互いに相寄らずにある距離を保っているのだ。相寄って暖め合わないのは鶴の習慣だろうかと、孤高の鶴の生きざまをふと思った。


以上、俳誌「雉」6月号より抜粋いたしました。