主宰俳句
はたた神 田島 和生
一筋の白滝懸かり成田山
ちちははの写真に見られ更衣
珈琲の氷嚙み割る雲の峰
乱れ字の青春日記黴の花
ぬばたまの蝌蚪散りまどふ泥けむり
一つ鳴き万の蛙の大鳴きす
喝采のごとき雷鳴比良高嶺
更けてなほ閃く比良のはたた神
同人作品評(6月号) 平田 冬か
しろがねに沙羅の芽組みぬ雨の中 谷口 和子 「夏椿」ともいわれる沙羅の木の芽立ちの様子をよく観ている。春になり固い冬芽が白っぽい産毛に覆われたような芽に変わる。その芽が雨の中で産毛をしろがねに光らせて健気に出番を待っているのだ。
向かひ火を放ちて鎮む野焼きかな 海野 正男
普通、勢いがつきすぎた野火を鎮める場合、人の手で叩きに叩くが、この野焼きでは、反対の方向から「向かひ火」を放って進んで来る野火の勢いを削いで鎮めている。野焼きの火を火で鎮めるのだから大々的な野焼きに違いない。
紅頬集 秀句佳句 田島 和生 主宰
石廟に蠟涙の痕若葉冷 後藤 かつら
石造りの神仏のほこら、つまり石廟の祭壇に蠟燭を燃やした跡が涙のように流れている。誰かが懸命に祈りを捧げたあとだろうか。頭上に若葉が覆い、ひんやりした空気が包む。「若葉冷」の季語を生かし、大変手堅い写生句である。
山青葉ダムの湖面を日の走り 辻江 恵智子
「湖面を日の走り」の表現が生き生きとし、秀逸である。同時発表の〈麦の秋貨車連結の音重き(原句・重き音)〉も、輝く麦秋と、ズシンという貨車の音がよく響き合い、作者の鋭い感性を思わせる。
以上、俳誌「雉」8月号より抜粋いたしました。
お 知 ら せ
9月の雉金沢句会の例会は、会場を変更して、
「石川四高記念文化交流館」にて、9月10日(日)午後1時より開催いたします。
田島 和生 先生をお招きいたします。
皆様、万障繰り合わせの上、ご出席ください。
※初心者の方、歓迎いたします。詳しくは、「雉」HPの「お便り」より
ご連絡下さいませ。お待ちして居ます。