「雉」北陸地区のブログ

「雉」句会の活動を公開しています

俳誌「雉」10月号から

主宰俳句 
     月下美人     田島 和生

   月下美人天の真上へ白鳥座
   月下美人はなびら震へ濃く匂ふ
   大蛾舞ふ月下美人に触れもせず
   三方を開け初秋の高山寺 
   僧正の兎いづこへ走り萩
   新涼の金堂裏の草引けり
   みんみんの千年杉に声絞る
   車百合磨き丸太へ数多咲き

   同人作品評(8月号)   菊田 一平
考えるロダンの像へ青嵐   青木 和枝
 ロダンの「考える人」を見たときは驚いた。像は右手のひじを左ひざに置き、顎を右手の甲に乗せている。椅子に腰かけてポーズを真似ると上体が極端に捻じれてしまう。なんでこんな窮屈な姿勢で物を考えるのだろうと不思議に思った。あるとき、彫刻の筋肉美を強調するためのポーズと知ってなるほどと思った。像は上野の山の樟や欅の緑に囲まれた国立西洋近代美術館の前庭に置かれている。青嵐が彫刻の筋肉美をたたえる讃歌のようにも思える。

重なれる山また山も竹の秋   太平 栄子
 先日、思い立って東吉野に行ってきた。長谷寺を過ぎたあたりから沿線の山々に竹林が目立ってくる。何年か前に長谷寺に行ったときは濃い杉の緑に覆われていたはず。これがいま問題になっている「山荒れ」の実態なのかとこころが寒くなった。たぶん太平さんも同じ気持ちで竹山を見たにちがいない。

棟梁の木端枕に昼寝せり   吉田 泰子 最近の家々の建て方を見ていると、あらかじめ加工した部材を現場でプラモデルのように組み立てる方式が多いようだ。釘を打つ音や槌で叩く音は聞こえるが、鋸や鉋や鑿を使う音はあまり聞こえてこない。たぶん工法が変わってきたのだろう。吉田さんの句から、現場いっぱい転がる木屑や鉋屑が見えてくる。棟梁の昼寝の枕の木端の匂いがとても清々しい。

以上、俳誌「雉」10月号より転載いたしました。