俳誌「雉」6月号から
主宰俳句
牡 丹 田島 和生
みづうみは大きな鏡初燕
笹むらへ匂ふむんむん落椿
ひらきつつ牡丹は淡き影重ね
白牡丹内へ内へと紅を足し
金星へ香りはつかに白牡丹
日の差して牡丹くれなゐ繻子(しゅす)光り
牡丹いま王者のごとし蟲よ来よ
本を閉ぢ牡丹また見に出づるかな
同人作品評(四月号) 海野 涼音
野兎の糞(まり)のひと粒雪の上 福江 ちえり
雪の上に野兎の黒く小さな糞があった。雪の白さの中で野兎の糞は一粒だけでも十分に目立ったのである。、糞と雪、その色彩的な対比が感じられた。奥行きのある風景画のような一句である。
瓶詰のフルーツポンチ女正月 宮崎 惠美
「瓶詰のフルーツポンチ」という珍しい物を詠まれている。このフルーツポンチを女性たちで、おしゃべりをしながら食べるものかもしれない。そのように考えると「フルーツポンチ」という食べ物が「女正月」に合っているように思えた。
吉田 泰子 さんを悼む
「事務の神様だった人」 佐瀬 元子
全国俳句大会の投句係を引き受けたときのこと。吉田さんも投句係をなさったことがあるので、どのように進めたらよいか伺ったところ、丁寧にわかりやすく教えて下さった。
その通りに行うと、誠に効率よく進めることができた。ご自分がやってみてよいと思われたやり方を、すべてやさしく教えて下さったことが吉田さんのすばらしさだと、今改めて思います。
本当に有難うございました。
吉田泰子さんの俳句 佐瀬元子選
門柱に一揆の傷や花蘇枋
蔀戸を小春の海へ開きけり
煤けたる明治のちらし蔵開
軒に吊る漁籠を灯せり初ほたる
(他 ご紹介されています)
紅頬集 秀句佳句 田島 和生 先生
梅東風や掛手拭の揺れやまず 古西 純子
寺の境内には白梅がほころぶ。手洗い場に立てば、薄い手拭が東風にいつまでも揺れている。早春の肌寒い風景を捉え、妙味豊かである。別に「亡き夫」の句もあり、慰霊の思いをこめて、作者は三月から四国遍路を始めたらしい。
残雪の枝々揺らし栗鼠二匹 志賀 理子
立春が過ぎながら、まだ寒い。二匹の栗鼠が残雪の枝を渡る光景を素直に詠み、実感があっていい。枝の雪を落としながら二匹の栗鼠が次々渡る様子も目に見えるようである。
校門へつづく桜並木かな 野崎 郁雄
以上、俳誌「雉」6月号より抜粋いたしました。
6月10日(日)雉金沢句会
於:金沢彦三公民館 2F
青木 和枝 選
◎ころころと亀の卵や新樹光 木谷 美奈子
汗飛ばし子供歌舞伎の名台詞 後藤 桂子
小半日濠の藻を刈る小舟かな 辻江 恵智子
古書店の窓に居着けり青蛙 辻江 恵智子
薫風や蹄軽やか赤母衣衆 木谷 美奈子
奥医王の峡はふやうに蕨狩 宮崎 惠美
薫風や稚(やや)にかみつく獅子頭 田崎 宏
小林 亮文 選
◎山車陰に出を待つ若衆茶碗酒 後藤 桂子
十薬に埋もれて里の遊女塚 本多 静枝
朝風やあご干す婆の島言葉 豊田 高子
己が火を川面に映し螢とぶ 山岸 昭子
更衣車窓に白のあふれをり 生田 章子
次回、7月8日(日)午後1時~4時
「雉」主宰 田島和生先生 ご出席予定。
万障繰り合わせの上、ご出席ください。
お待ちしています。
お知らせ
「ねんりんピック」の投句締切は、6月15日です。
※消印有効
5月27日(日)富山高志句会
於:富山教育記念会館
青木 和枝 選
◎胸ボタン一つはづせる薄暑かな 本多 静枝
昼顔やビーチボールの弾む音 佐瀬 元子
胸高に巫女の緋袴新樹光 本多 静枝
苜蓿かんむりにして下校の子 大上 章子
学生の白き手で植う富富富苗 生田 章子
卓布替へ薄暑の部屋を開け放つ 本多 静枝
小林 亮文 選
◎広き庭狭めて絵凧五月晴 生田 章子
万緑に埋もるる小屋の赤き屋根 福江 真里子
白山の残雪映ゆる麦の風 度山 紀子
胸高に巫女の緋袴新樹光 本多 静枝
苜蓿かんむりにして下校の子 大上 章子
春筍の穂先そこここ古墳径 青木 和枝
石山を眼下に啼きし豆回し 福江 ちえり
次回、6月24日(日)午後1時~
於:富山県教育記念会館 5F
兼題「十薬」
お知らせ
9月16日(日)第三日曜日に変更します。
(第四日曜日は休館のため)
10月21日(日)第三日曜日に変更します。
(雉全国大会のため)