「雉」北陸地区のブログ

「雉」句会の活動を公開しています

雉ネット俳句2019

令和元年 平成31年(2019)入選作品
第60回 令和元年 12月の募集
一般の部
小林 美成子 選

〇時雨るるや喪中はがきのまた一人   埼玉県深谷市   潟淵 恵美子
〇ご馳走と言えばご馳走牡丹鍋     三重県四日市市  後藤 允孝
〇百年越す第一高炉初日の出      福岡県北九州市  高野 裕治
 海光はるか紀の国の蜜柑山      千葉県松戸市   吉沢 美佐枝
 雪国や雪嫌ひつつ雪を待つ      神奈川県小田原市 白石 正彦
 いわし雲足湯に癒す旅疲れ      富山県小矢部市  野澤 多美子
 城山へ押し寄せてゆく鰯雲      富山県小矢部市  野澤 多美子
 柚子風呂に柚子を投げ合ふ父子かな  富山県小矢部市  松本 よね子
 アパートにおひとりさまの聖夜かな  岐阜県岐阜市   辻  雅宏
 紙を漉くうだつの町や水の音     岐阜県岐阜市   辻  雅宏
 認知の妻の笑顔を入れて賀状書く   大阪府東大阪市  森  教安
 この男抱き取らんと雪女郎      大阪府大阪市   山中 紅萼
 古書めくる指先白し冬の夜      広島県大竹市   西亀
 北窓を塞ぐ海鳴りの音閉じ込めて   福岡県福岡市   森内 梅子
林 さわ子 選

〇茅葺の屋根百年や軒氷柱       愛知県津島市   正木 羽後子
〇かつかつと屋根の足音冬鴉      大阪府大阪市   山中 紅萼
〇そこだけに粉雪の降る薄あかり    兵庫県神戸市   柴原 明人
 空遠く除夜の汽笛の響きけり     神奈川県横浜市  龍野 ひろし
 城山へ押し寄せてゆく鰯雲      富山県小矢部市  野澤 多美子 
 柚子風呂に柚子を投げ合ふ父子かな  富山県小矢部市  松本 よね子
 夕影にぬくもり残る柿落葉      長野県岡谷市   京  真如
 紙を漉くうだつの町や水の音     岐阜県岐阜市   辻  雅宏
 枯葉散る生まれ育ちし庭の隅     兵庫県神戸市   柴原 明人
 紅白の繭玉潜る舞妓かな       愛媛県新居浜市  加島 一善
 鉄塔にふくら雀の押し合へり     広島県広島市   久保田 美佳
 百年越す第一高炉初日の出      福岡県北九州市  高野 裕治
 北窓を塞ぐ海鳴りの音閉じ込めて   福岡県福岡市   森内 梅子
〇特選句 選評
小林 美成子

時雨るるや喪中はがきのまた一人  埼玉県深谷市   潟淵 恵美子
 年の瀬が近づくと送られてくる喪中はがき。私達の年代になるとその数は年々増し薄墨の書面に故人を偲ぶことが多くなった。この句の「また一人」には、ぽつぽつと届く喪中はがきへの感慨が表れている。

ご馳走と言えばご馳走牡丹鍋    三重県四日市市  後藤 允孝
 牡丹鍋は猪肉をたっぷりの野菜で煮込んだ野趣に富んだ鍋料理。作者は日常的に食されているのだろうか。「ご馳走と言えばご馳走」の率直な表現がこのワイルドな食べ物の本質を云い得ている。文語では「言へば」だが口語体の方が句の内容に合っている。

百年越す第一高炉初日の出     福岡県北九州市  高野 裕治
 明治期より日本の産業を支えてきた製鉄の高炉は、役目を終えた今も堂々とした威容を誇り、今元朝の日を浴びて辺りには淑気が満ちる。「百年」「第一」などの数詞が効果的な骨太の句。上五は「百年の」でも十分意味は通ずる。
林 さわ子 

茅葺きの屋根百年や軒氷柱     愛知県津島市   正木 羽後子 
 築百年の茅葺の軒に大きな氷柱が下がっている。百年もの長い間繰り返された光景である。「軒氷柱」の一語に藁葺屋根の大きさ、暮らしの厳しさ、人の強さが表現されている。 
 
かつかつと屋根の足音冬烏     大阪府大阪市   山中 紅萼        
 烏は賢い鳥である。食べ物が少なくなる冬、何の用があるのか烏が屋根を歩いている。
「かつかつ」という擬声語が、滑りやすい屋根瓦を歩く烏の様子を上手く表し、烏のしたたかさまで感じさせる。         

そこだけに粉雪の降る薄あかり   兵庫県神戸市   柴原 明人 
 雪の夜、街灯だろうか、薄明りの所だけに降りしきる粉雪が見えた。小さな明りの中の雪を言うことで果てしない雪の世界を表現し、作者の静かな感慨が伝わる。      
                    
第59回 令和元年 11月の募集
一般の部
小林 美成子 選

〇秋うらら鳥居の内の白き馬      富山県小矢部市  福江 真子
〇五線譜に息つぎありぬ冬銀河     三重県四日市市  後藤 允孝
〇ブロック塀撤去されたる夜寒かな   大阪府東大阪市  森  教安
 売薬の詰め替へ来たる冬隣      埼玉県深谷市   潟淵 恵美子
 潮の香を宿す葉先の霜雫       千葉県松戸市   吉沢 美佐枝
 草の穂や長き影置く塞の神      千葉県松戸市   吉沢 美佐枝
 富士を背にサーファーの影逗子立冬  東京都      東西 南北
 度々のナースコールやそぞろ寒    神奈川県横浜市  龍野 ひろし
 百歳の人と合席大根吹く       富山県小矢部市  野澤 多美子
 石蕗の花朝の空気の眩しさに     富山県富山市   谷  光恵
 椋鳥や会議のテーマまとまらず    富山県富山市   山下 貴子
 灯ともして聖樹にありぬ木の匂    三重県四日市市  後藤 允孝
 大空をすべて使つて大夕焼      愛媛県新居浜市  加島 一善
 町鳩の側に寄り来る小春かな     福岡県福岡市   森内 梅子
林 さわ子 選

〇コロッケの上に熊手の総菜屋     神奈川県小田原市  白石 正彦
〇灯ともして聖樹にありぬ木の匂    三重県四日市市   後藤 允孝 
〇ゆりかごと一緒に揺れる秋桜     奈良県奈良市    相沢 はつみ
 草の穂や長き影置く塞の神      千葉県松戸市    吉沢 美佐枝
 百歳の人と合席大根吹く       富山県小矢部市   野澤 多美子
 秋うらら鳥居の内の白き馬      富山県小矢部市   福江 真子
 浜風に葛大揺れの能登路かな     富山県小矢部市   福江 真子
 ままごとの客になりたり石蕗の花   富山県富山市    伊藤 佳子
 秋の朝新しい靴おろしたり      富山県富山市    山下 貴子
 ねんねこに子のバタ足や駆け抜ける  大阪府大阪市    山中 紅萼
 落葉道かつぽかつぽと馬車がゆく   広島県呉市     谷本 佳子
 朝起きる母の吐息や冬近し      愛媛県新居浜市   加島 一善
 裸木の糊代ほどの影つくり      福岡県北九州市   高野 裕司
 返り花この世に未練あるかしら    福岡県福岡市    森内 梅子
〇特選句 選評
小林 美成子

秋うらら鳥居の内の白き馬    富山県小矢部市  福江 真子
 この馬は神社に飼育されている白馬か、或は木彫の神馬か。いずれにせよ秋の澄んだ空気のもと、神域の清浄な雰囲気と白馬の取り合せが印象的な句となっている。神社の境内を「鳥居の内」とした表現の工夫が良かった。

五線譜に息つぎありぬ冬銀河   三重県四日市市  後藤 允孝
 楽器の演奏には息継ぎが大切。楽譜のブレス記号に注目して俳句にした作者の感覚が新鮮である。季語の冬銀河の斡旋も成功している。元句の「息つぎありし」では過去形なので「ありぬ」と添削。

ブロック塀撤去されたる夜寒かな 大阪府東大阪市  森  教安
 ブロック塀の改修工事の為か、あるいは何らかの災害の被害に会われたのでしょうか、今まであった囲いがなくなりあらわになった家屋。「夜寒かな」に落ち着かない不安な気持ちが出ている。

林 さわ子

コロッケの上に熊手の総菜屋   神奈川県小田原市 白石 正彦
 商売繫盛を願って、酉の市で買った熊手を店に飾る。人気の商品なのか、丁度コロッケの上だ。下町の賑わいが生き生きと伝わる。

灯ともして聖樹にありぬ木の匂  三重県四日市市  後藤 允孝
 この季節、街には聖樹の電飾が華やかである。近寄った作者は木の匂いに気が付いた。元来、樅木などの生木に飾り付けたのだから良い匂いがあるはずだ。忘れていた木の姿を思い出させてくれ、新鮮である。 

ゆりかごと一緒に揺れる秋桜   奈良県奈良市   相沢 はつみ
 秋風の中、秋桜が揺れる。「ゆりかごと一緒に」との表現が赤ん坊の機嫌の良さをうかがわせ、見ている作者の幸せを感じさせる。


第58回 令和元年 10月の募集
一般の部
小林 美成子 選

〇墓のみの里をみなへしをみなへし   千葉県松戸市   吉沢 美佐枝
天平の礎石を沈め草紅葉       三重県四日市市  後藤 允孝
〇焼きなすのミステリアスな皮を剥ぐ  奈良県奈良市   相沢 はつみ
 人囲む露天の将棋天高し       埼玉県深谷市   潟淵 恵美子
 修復の進まぬ甍雁の声        千葉県松戸市   吉沢 美佐枝
 膨らんでやがて楕円に芋の露     横浜市港北区   龍野 ひろし 
 山路ゆく一歩一歩に秋の風      富山県小矢部市  西野 可代子
 枸杞の実を浮かべ杏仁豆腐かな    富山県小矢部市  福江 真子
 名を刻む万年筆や文化の日      愛知県津島市   正木 羽後子
 丸太椅子並ぶ三和土や走り蕎麦    愛知県津島市   正木 羽後子
 色変へぬ御油の松並風分かつ     三重県四日市市  後藤 允孝
 秋深む円空仏彫の翳         三重県四日市市  後藤 允孝
 シャッターを下す音急く日短か    兵庫県神戸市   柴原 明人
 秋夕焼残業のない金曜日       奈良県奈良市   相沢 はつみ
林 さわ子 選

〇墓のみの里をみなへしをみなへし   千葉県松戸市   吉沢 美佐枝 
〇秋深む円空仏彫の翳         三重県四日市市  後藤 允孝
〇紅葉晴鞍馬の山を登りきる      富山県小矢部市  福江 真子
 餅撒の頬に当たりし秋祭       埼玉県深谷市   潟淵 恵美子
 膨らんでやがて楕円に芋の露     神奈川県横浜市  龍野 ひろし
 秋の日やテニスシューズに乾く砂   神奈川県横浜市  龍野 ひろし
 柿たわわ大風過ぎし朝の空      長野県岡谷市   京 真如
 丸太椅子並ぶ三和土や走り蕎麦    愛知県津島市   正木 羽後子
 天平の礎石を沈め草紅葉       三重県四日市市  後藤 允孝
 ばい廻しひも生き生きと宙を舞ふ   大阪府東大阪市  森 教安
 焼きなすのミステリアスな皮を剥ぐ  奈良県奈良市   相沢 はつみ
 猪去りて深き堀り痕寺の裏      広島県大竹市   西亀
 大皿に香りを供ふ茸飯        広島県大竹市   西亀
 夕焼や鵯の声一度切り        広島県広島市   久保田 美佳
 
〇特選句 選評
小林 美成子

墓のみの里をみなへしをみなへし   千葉県松戸市   吉沢 美佐枝
 生家はもう無く墓参りに訪れるだけの故郷となってしまった。墓地を取り巻く花野の広さと作者の心情が「をみなへしおみなへし」の措辞に表れている。

天平の礎石を沈め草紅葉       三重県四日市市  後藤 允孝
 奈良の平城宮跡がすぐ目に浮かぶ。華やかな天平文化の痕跡である大きな礎石も今は秋草の底である。「礎石を沈め」が良い。

焼きなすのミステリアスな皮を剥ぐ  奈良県奈良市   相沢 はつみ
 焼きなすを現代的な感覚で捉えていて楽しい句。真っ黒な皮をすーと剥くと現れる輝くばかりの萌黄色。あれは確かにミステリアスだ。
林 さわ子

墓のみの里をみなへしをみなへし   千葉県松戸市   吉沢 美佐枝 
 親兄弟がいなくなってしまった故郷。墓参に帰ると、おみなえしが沢山咲いていた。をみなえしのリフレインが失ったものを呼んでいるようだ。               
                    
秋深む円空仏彫の翳         三重県四日市市  後藤 允孝
 円空仏は素朴で、人々に愛されている。その荒い彫の翳に、作者は素朴なだけではない何かを感じたのだろう。秋深む頃だからか。 
                    
紅葉晴鞍馬の山を登りきる      富山県小矢部市  福江 真子
 「登りきる」によって紅葉晴の鞍馬山に登った達成感と紅葉の輝きが伝わる。            
第57回 令和元年 9月の募集
一般の部
大前 貴之 選

〇鵙の贄忘れ物して戻る道     千葉県市川市   鳥越 暁
〇結婚式の招待状や小鳥来る    富山県小矢部市  鈴木 美海
蚯蚓鳴くさつき地震のあつたとこ 福岡県福岡市   森内 梅子
 廃線の錆の匂ひの草紅葉     千葉県市川市   鳥越 暁
 ものの影みなやはらかく夕月夜  千葉県松戸市   吉沢 美佐枝
 声絞り出す九月の蝉の孤独    神奈川県横浜市  龍野 ひろし
 険しくも南部の宿の氷頭膾    神奈川県小田原市 白石 正彦
 墓参り皆で乗り込む子の車    富山県小矢部市  西野 可代子
 燈台へ続く細道葛の花      富山県小矢部市  福江 真子
 虫時雨やもりのこのこ降りてくる 富山県富山市   山下 貴子
 刈草の嵩低くなり虫の声     長野県岡谷市   京 真如
 赤門に学生戻る九月かな     岐阜県岐阜市   辻 雅宏
 きらきらと光ばかりの秋はじめ  大阪府大阪市   山中 紅萼
 手枕や血潮のリズム聴く秋夜   兵庫県神戸市   柴原 明人
 花野風子犬耳のみ動きけり    広島県呉市    谷本 佳子
 鐘楼の瓦光りて良夜かな     広島県大竹市   西亀
 輪になりて芋炊く伊予の河原かな 愛媛県新居浜市  加島 一善
〇特選句 選評
大前 貴之 

鵙の贄忘れ物して戻る道    市川市   鳥越 暁
 歩く方向が行きと帰りでは異なるので、何かの陰になっていた鵙の贄が見えたというのではない。足早に取って返す作者の心の張りが、ほんの数分前には見逃していた鵙の贄にきづかせてくれた、というのだ。繊細な心の揺らぎを即物具象の写生に託した秀作と言えよう。

結婚式の招待状や小鳥来る   小矢部市  鈴木 美海
 季語が付き過ぎでは?という意見があるとは思う。しかし、突然の招待状に揺れる作者の心と響きあう「小鳥来る」という季節の事実を見逃さなかった作者の感覚は秀逸であり、付き過ぎと言って切って捨てるには惜しいものがある。付き過ぎを恐れず、先ず、この感覚を研ぎ澄まして欲しいものだと思う。

蚯蚓鳴くさつき地震のあつたとこ  福岡市 森内 梅子
 なるほど、この季語にはこんな使い方があったか!この季語の新局面を発見した作品として、多くの同好の士に記憶して欲しい作品だ。いやしかし、なるほどなあ……。

 

第56回 令和元年 8月の募集
一般の部
〇一湾を見下ろす橋や秋の風     富山県富山市   藤井 薫
〇消印のインク擦るる夏見舞     富山県小矢部市  福江 真子
〇地下街へ残暑の傘をたたみけり   岐阜県岐阜市   辻 雅宏
〇合わす手の皺の深さや原爆忌    広島県広島市   久保田 美佳

 初蝉の声の届けり牧の風      埼玉県深谷市   潟淵 恵美子
 真夏日の鋏かろけき床屋かな    埼玉県深谷市   潟淵 恵美子
 しづかなる蛇行の運河明早し    千葉県松戸市   吉沢 美佐枝
 竹林の風野涼しきカフェテラス   千葉県松戸市   吉沢 美佐枝
 籐椅子で大東京の夜景かな     東京都      東西 南北
 高原の雨に靄立つ黄菅原      神奈川県横浜市  中島 聖華
 青栗の膨らむ毬の柔らかし     神奈川県横浜市  龍野 ひろし
 一陣の風に揺らめく花木槿     神奈川県小田原市 白石 正彦
 秋涼や真白きシーツぱんと干す   富山県富山市   山下 貴子
 今朝の秋長袖シャツを出しもして  富山県富山市   山下 貴子
 立山や鷺の飛び立つ青田波     富山県富山市   谷 光恵
 宿題に追わるる子ども法師蝉    富山県富山市   谷 光恵
 浜風に帽子飛ばされ夏の果     富山県小矢部市  福江 真子
 立葵朝風通る厨かな        長野県長野市   和田 いち子
 立葵朝風通る厨かな        長野県長野市   和田 いち子
 鵜舟まつまだ冷めやらぬ川原石   岐阜県岐阜市   石崎 宗敏
 夏帽子振りて列車を見送れり    岐阜県岐阜市   石崎 宗敏
 漆黒の自在鉤吊るどぢよう鍋    愛知県津島市   正木 羽後子
 燈火親し書架に積まるる医書あまた 三重県四日市市  後藤 允孝
 草を刈る匂ひ香ばし雲の峰     大阪府大阪市   山中 紅萼
 亡き母の声で目覚めり蚯蚓鳴く   兵庫県神戸市   柴原 明人
 心臓を射抜いてよその水鉄砲    奈良県奈良市   相沢 はつみ
 盆過ぎや客間の襖除けたまま    広島県呉市    谷本 佳子
 毬栗や崖の際まで転がりて     広島県呉市    谷本 佳子
 盆過ぎや客間の襖除けたまま    広島県呉市    谷本 佳子
 栗山へ先を競へる童かな      広島県大竹市   西亀 
 暗闇へ流磴ひとつまたひとつ    愛媛県新居浜市  加島 一善
 暗闇へ流磴ひとつまたひとつ    愛媛県新居浜市  加島 一善
 あっぱっぱ二の腕の肉垂れ下がり  福岡県北九州市  高野 裕治
高校生の部
 春の鮒われの映りて逃げにけり   福井県坂井市   小林 陸人

小学生の部
 ひまわりは太陽を向き笑ってる   千葉県印西市   清水 紗良

第55回 令和元年 7月の募集
一般の部
〇炎昼や蛇口に並ぶ陸上部      神奈川県横浜市  龍野 ひろし
〇父と子のはしご降りゆく井戸浚   広島県呉市    谷本 佳子
〇山ひとつ越えて越後の大暑かな   富山県富山市   藤井 薫

 夏うぐひす大森をなす古墳かな   埼玉県深谷市   潟淵 恵美子
 紫陽花や汽笛近づく微塵駅     埼玉県深谷市   潟淵 恵美子
 飛鳥路をマップ片手に夏来たる   埼玉県深谷市   潟淵 恵美子
 とんぼうや雲描きたる浅間山    千葉県市川市   鳥越 暁
 大津絵の朱墨のにじむ秋団扇    千葉県松戸市   吉沢 美佐枝
 日盛の静まり返る漁師町      千葉県松戸市   吉沢 美佐枝
 雨の池背筋伸ばして杜若      東京都      東西 南北
 千枚田映す夏空踏む農夫      東京都      東西 南北
 大空に鳥高くして梅雨明ける    神奈川県小田原市 白石 正彦
 光り過ぐ鮎ゐて中り未だなく    神奈川県横浜市  中島 聖華
 灯り透く町家二階の青簾      神奈川県横浜市  龍野 ひろし
 射水川鮎釣りの竿一列に      富山県小矢部市  西野 可代子
 夏潮の香のなかに立つ塩田句碑   富山県小矢部市  福江 真子
 鉄風鈴駅舎に音色競ひ合ひ     富山県富山市   藤井 薫
 たつぷりと紫陽花生けて友を待つ  石川県金沢市   金山 多美子
 友の描くあぢさゐが好き梅雨に入る 石川県金沢市   金山 多美子
 三方五湖それぞれの碧夏光る    長野県岡谷市   京 真如
 伏流の静けき水面夏木立      長野県岡谷市   京 真如
 渋にほふ傘の干場や旱梅雨     岐阜県岐阜市   石崎 宗敏
 白南風や鞍に鏝絵の恵比須天    岐阜県岐阜市   石崎 宗敏
 酒蔵の暗さ涼しき三和土かな    岐阜県岐阜市   辻 雅宏
 水彩の西瓜ふたきれ夏見舞     愛知県津島市   正木 羽後子
 梵鐘の響き籠れる梅雨湿り     三重県四日市市  後藤 允孝
 家の窓電柱二本と雲の峰      大阪府東大阪市  森 教安
 地中より灯と涌出でり夕立あと   兵庫県神戸市   柴原 明人
 ネパールの国旗を覚え運動会    奈良県奈良市   相沢 はつみ
 ほととぎす雨にうたるる大鳥居   広島県呉市    谷本 佳子
 宮参り手水に浮ぶ四葩かな     愛媛県新居浜市  加島 一善
 立葵見上げるほどに天を突き    愛媛県新居浜市  加島 一善
 斑猫やこの町古し川の町      福岡県福岡市   森内 梅子


 
第54回 令和元年 6月の募集
一般の部

〇海紅豆しづかに夕日沈みきる     千葉県松戸市   吉沢 美佐枝
〇押し花の如く開きし鉄線花      神奈川県横浜市  中島 聖華
〇十薬や土の錆びたる鍛冶屋跡     岐阜県岐阜市   石崎 宗敏
〇風鈴や母屋へ向かふ長廊下      広島県呉市    谷本 佳子
〇小麦粉の湿布ルンゲに油蝉      広島県広島市   前田 節
〇庭手入れ終へしを眺め夏座敷     富山県富山市   藤井 薫

 葉桜の影を揺らして屋形船      埼玉県深谷市   山本 美海
 川蜻蛉水切りの輪に絡みけり     千葉県市川市   鳥越 暁
 雨の来て香を八方へ栗の花      千葉県松戸市   吉沢 美佐枝
 梅の雨待合室のエタノール      千葉県松戸市   吉沢 美佐枝
 香重く漂ふ旧家梅雨に入る      東京都      東西 南北
 街はみな光りの中に梅雨晴間     神奈川県横浜市  龍野 ひろし
 色町に下駄の音して釣忍       神奈川県小田原市 白石 正彦
 青芒ボール蹴り合ふ父子かな     富山県富山市   藤井 薫
 天の川うしろ姿の祖父と祖母     富山県高岡市   加能 雅臣
 さなぶりを終へし躯を湯の中に    富山県小矢部市  松田 文子
 花卯木峡の山道花明り        富山県小矢部市  松田 文子
 切支丹の流刑の跡や七変化      富山県小矢部市  福江 真子
 遠富士を望む故郷風薫る       長野県岡谷市   京 真如
 行々子草に隠るる渡船場       岐阜県岐阜市   石崎 宗敏
 蟇なくや公民館の父の葬       愛知県津島市   正木 羽後子
 裏口の風になびける夏暖簾      大阪府東大阪市  森 教安
 親追うて高く飛びたる燕の子     広島県呉市    谷本 佳子
 青葉風コーヒーの香のしてゐたり   広島県広島市   久保田 美佳
 チャイム鳴り駆ける子追う子夏兆す  広島県広島市   前田 節
 御簾越しに眺める庭や業平忌     福岡県福岡市   森内 梅子
 
小学生の部
〇かさたてにぼくのかさだけ夏の空   広島県広島市   前田 穣佑

第53回 令和元年 5月の募集
一般の部
〇焦げ臭き風やひかりや麦の秋     千葉県松戸市   吉沢 美佐枝
〇新しき町に越し行く夏みかん     神奈川県小田原市 白石 正彦
〇義仲の戦の跡や若葉風        富山県小矢部市  福江 真子
〇寄書きに知らぬ名のあり更衣     兵庫県神戸市   柴原 明人
猫の恋ストッキングは伝線す     奈良県奈良市   相沢 はつみ
〇更衣母の箪笥の香袋         広島県呉市    谷本 佳子
〇一斉に駆けだす子ども磯開き     広島県広島市   久保田 美佳
〇葉桜のそよぎの中を鳥移る      大阪府大阪市   山中 紅萼

 立山は屏風のごとしチューリップ   埼玉県深谷市   潟淵 恵美子
 炎帝や去年より遠き山の道      千葉県市川市   鳥越 暁
 卯の花やもう母居らぬ母の家     千葉県松戸市   吉沢 美佐枝
 社友会会葬僅か走り梅雨       東京都      東西 南北
 お囃子の子の恥ぢらふや舟舞台    神奈川県横浜市  龍野 ひろし
 味噌蔵の木桶のにじみ雨蛙      神奈川県小田原市 白石 正彦
 差し金の形をたもつ梁の蛇      富山県高岡市   加能 雅臣
 春の海沖へ釣り舟揺らぎゆき     富山県小矢部市  松田 文子
 若葉風有磯につづく能登岬      富山県小矢部市  松田 文子
 仏前に草餅の香のただよへり     富山県小矢部市  西野 可代子
 野を焼いて帰り来る道母子草     富山県小矢部市  西野 可代子
 境内に令和の御旗風薫る       富山県小矢部市  福江 真子
 薫風や屋根に家紋の散居村      富山県富山市   藤井 薫
 礪波の水田彩る芝桜         富山県富山市   藤井 薫
 なぞなぞは解けぬままなり日の永し  石川県金沢市   金山 多美子
 有磯海凪いで立山春かすみ      石川県金沢市   金山 多美子
 初夏や神に白帆の二つ三つ      岐阜県岐阜市   辻 雅宏
 薄暑光トロッコ軋む黒部かな     愛知県津島市   正木 羽後子
 ジャスミン咲き家庭訪問始まりぬ   広島県呉市    谷本 佳子
 逃げ込んだ隙間に置けり蜥蜴の尾   広島県広島市   前田 節
 一斉に駆けだす子ども磯開き     広島県広島市   久保田 美佳
 花吹雪鎧戸鳴らし舞ひ込めり     広島県広島市   久保田 美佳
 一匹の蚊に惑わさる大法会      広島県大竹市   西亀
 消し忘れし留守電を聞く父の日は   愛媛県新居浜市  加島 一善
 
小学生の部
夏の雲一年生とかた組んで       広島県広島市   前田 穣佑
圧勝の広島カープ夏来る        広島県広島市   前田 穣佑

 

 

第52回 平成31年 4月の募集
一般の部
〇家持の歩きし道や山桜       富山県小矢部市  松田 文子
〇春光や裏返されて土黝し      富山県小矢部市  西野 可代子
〇草餅を先祖の墓に供へたり     富山県小矢部市  西野 可代子
〇腰掛けし石の温みや松の花     富山県富山市   藤井 薫
〇花三分ゆつたり浸かる露天風呂   石川県金沢市   金山 多美子

 また一人駆け込んで来て花筵    埼玉県深谷市   潟淵 恵美子
 夕長し三角波のはがね色      千葉県松戸市   吉沢 美佐枝
 街道の馬頭観音花あしび      千葉県松戸市   吉沢 美佐枝
 丘陵に光あまねく芝桜       神奈川県横浜市  龍野 ひろし 
 青空を我が物とせん紫木蓮     神奈川県横浜市  龍野 ひろし
 腹みせて飛ぶ花冷えのF-15     富山県高岡市   加能 雅臣
 雨後の朝手のひら大の春子かな   富山県小矢部市  松田 文子
 家持の歩きし道や山桜       富山県小矢部市  松田 文子
 岸の上に長き尾を引く雉子かな   富山県小矢部市  西野 可代子
 梁見上げ酒酌み交はす花の宿    富山県小矢部市  福江 真子
 飛石の乾く日差や青き踏む     富山県富山市   藤井 薫
 腰掛けし石の温みや松の花     富山県富山市   藤井 薫
 暁闇へ鈴を一振り遍路発つ     岐阜県岐阜市   石崎 宗敏
 鍵盤の音重たきや菜種梅雨     岐阜県岐阜市   辻 雅宏
 本を持つ手より蛙の目借時     岐阜県岐阜市   辻 雅宏
 三台の自転車つづき蛙鳴く     大阪府東大阪市  森 教安
 保健室登校さつまいものケーキ   奈良県奈良市   相沢 はつみ
 よもぎ餅机に祖母の置き手紙    広島県呉市    谷本 佳子
 鉄橋を渡る終電おぼろ月      広島県広島市   白石 正彦
 蓬茹で窓に緑の蒸気かな      広島県大竹市   西亀
 軽々と雑巾掛けや春の朝      広島県大竹市   西亀
 更衣シャツもズボンも真つ白に   愛媛県新居浜市  加島 一善
小学生の部
〇見上げるとさくら一片三の丸    広島県広島市   前田 穣佑
 うららかやみやげ選びの三十分   広島県広島市   前田 穣佑

第51回 平成31年 3月の募集
一般の部
〇何もかもきれいに包み雛納     富山県小矢部市  西野 可代子
〇春の虹子を呼ぶ声の重なつて    広島県広島市   前田 節
〇江戸川のゆるき流れや揚雲雀    千葉県松戸市   吉沢 美佐枝
〇縁側の日にかざしては雛納     富山県富山市   藤井 薫
〇山門へ海風強き彼岸かな      広島県大竹市   西亀

 声に出てはや見えぬなり初燕    埼玉県吉川市   石井 かずお
 青空へブランコの子の靴飛ばし   埼玉県深谷市   潟淵 恵美子
 花散るや日差しあまねき利根堤   千葉県松戸市   吉沢 美佐枝
 逆立つる馬のたてがみ風光る    神奈川県横浜市  龍野 ひろし
 初音うれしや口笛で真似てみる   神奈川県横浜市  龍野 ひろし
 摘む指に香りのうつり蕗の薹    富山県小矢部市  松田 文子
 菜の花や小流れの音軽やかに    富山県小矢部市  福江 真子
 青空へ紅白梅の咲き満つる     富山県富山市   藤井 薫
 滑走路尽きて金網土筆摘      岐阜県岐阜市   石崎 宗敏
 土筆摘む空襲の火の這ひし土手   岐阜県岐阜市   石崎 宗敏
 鶯餅宇陀の和菓子屋薄暗し     岐阜県岐阜市   石崎 宗敏
 落第やまばゆくひかる潦      愛知県津島市   正木 羽後子
 ふらここを軋ませ空へ蹴り返す   三重県四日市市  後藤 允孝
 咲くもよし散るもまたよし大桜   三重県四日市市  後藤 允孝
 御顔の真綿も古び雛納       京都府京都市   加藤 しげお
 埋ミ火のごとくに咲いて椿かな   京都府京都市   加藤 しげお
 こんなにも美しと思わず花透く陽  大阪府大阪市   木村 さよみ
 初デート紅茶のレモン齧りけり   奈良県奈良市   相沢 はつみ
 一山の火の鳥となる野焼きかな   兵庫県神戸市   柴原 明人
 待ち合わせ時計の長針月を指す   奈良県奈良市   相沢 はつみ
 岩間より細き流れや水温む     広島県呉市    谷本 佳子
 茎立や小さき祠傾きて       広島県呉市    谷本 佳子
 残る鴨波間に揺れて遠くなり    広島県広島市   久保田 美佳
 春塵や下宿の薄き窓ガラス     広島県廿日市市  稲留 伸治
 かくれんぼひとりもどらぬ遅日かな 愛媛県新居浜市  加島 一善
 目を見張り喉ふくらます蛙かな   愛媛県新居浜市  加島 一善
 しみじみと人間が好き春の雪    福岡県福岡市   森内 梅子

中学生の部
細雪私の頬に溶けてゆく      東京都      出目 そよか
 菜の花や隠れた月を見つめてる   東京都      出目 そよか
小学生の部
 春日和ブルグミューラーが終わりそう 広島県広島市  前田 穣佑
 山はだにブルーシートや春の虹    広島県広島市  前田 穣佑
第50回 平成31年 2月の募集
一般の部
〇ため息を吹いて虹色しやぼん玉    広島県広島市  白石 正彦
〇伊勢沖の白浪高き二月かな      愛知県津島市  正木 羽後子

 洞窟の祠へ吹雪く冬の波       埼玉県深谷市  潟淵 恵美子
 霜枯や乾ききつたる休耕田      千葉県松戸市  吉沢 美佐枝
 単線の通過待つ咲き冬の海      東京都     東西 南北
 晴れ晴れと飴切る音や初大師     東京都     東西 南北
 手のひらに花びらのごと春の雪    神奈川県横浜市 龍野 ひろし
 春の霜みるみる融けてしまひけり   富山県小矢部市 西野 可代子
 ひとつづつ薄紙はづし雛飾る     富山県小矢部市 福江 真子
 細枝に神籤結ばれ春立てり      富山県小矢部市 福江 真子
 冬木立鴉飛び交ふ城址かな      富山宴小矢部  松田 文子
 乗換へのホームに残る寒さかな    岐阜県岐阜市  辻 雅宏
 幾重にもかさなる樹皮や梅二輪    岐阜県岐阜市  石崎 宗敏
 鳩放つ落成式や風光る        岐阜県岐阜市  石崎 宗敏
 みちのくの松の青さや六の花     愛知県津島市  正木 羽後子
 尾頭のひと際焼けし目刺かな     京都府京都市  加藤 しげお
 鬱屈の爆音走る春の宵        大阪府大阪市  木村 さよみ
 涅槃図や身の丈ほどの示し棒     広島県大竹市  西亀
 一本の根方に丸く落椿        広島県広島市  白石 正彦 
 百冊の寄書き積まれ遍路宿      広島県廿日市市 稲留 伸治
第49回 平成31年 1月募集
一般の部
〇夫の息我にかかりて柿吊るす    富山県小矢部市 西野 可代子
〇知らぬ間に力の入る寒さかな    兵庫県神戸市  柴原 明人
〇消灯のユースホステル冬銀河    広島県廿日市市 稲留 伸治
〇石畳続く伽藍や淑気満つ      富山県富山市  藤井 薫

 砂風呂の足にかかりし冬の波    埼玉県深谷市  潟淵 恵美子
 幼子の言葉を訳し初笑       埼玉県深谷市  潟淵 恵美子
 己が身の影を崩さず浮寝鳥     千葉県松戸市  吉沢 美佐枝
 向き合うて喜寿や傘寿や雑煮椀   千葉県松戸市  吉沢 美佐枝
 なにもかも忘れてつかる柚子湯かな 富山県小矢部市 小室 稔
 臥す兄の手渡ししたるお年玉    富山県小矢部市 松田 文子
 初詣喜寿を迎へし夫とゆく     富山県小矢部市 松田 文子
 下町にソプラノ洩れて星冴ゆる   富山県小矢部市 福江 真子
 初詣丹のあざやかな仁王立つ    富山県富山市  藤井 薫
 九谷焼の赤絵の小皿屠蘇祝ふ    富山県富山市  藤井 薫
 寒き朝白湯一椀をいとほしむ    石川県金沢市  金山 多美子
 寒鯉の水の重さに身じろがず    岐阜県岐阜市  石崎 宗敏
 これやこの寒九の水か薬飲む    岐阜県岐阜市  辻 雅宏
 遠富士の真白き嶺や初御空     岐阜県岐阜市  辻 雅宏
 先づメール開きて仕事始めかな   岐阜県岐阜市  辻 雅宏
 伊吹山尖り尖りて風冴ゆる     三重県四日市市 後藤 允孝 
 鼻からも白息の出て元気元気    京都府京都市  加藤 しげお
 水仙や岬は海へ雪崩こみ      京都府京都市  加藤 しげお
 寝起き顔七草がゆの湯気の前    広島県呉市   谷本 佳子
 電話して雪の様子を父に問ふ    広島県広島市  久保田 美佳
 冬野菜ひとつ残りし販売所     広島県広島市  前田 節
 その場にて羽ばたいてみる冬の蝶  広島県広島市  白石 正彦
 地吹雪や自販機ひそか灯りけり   広島県広島市  白石 正彦
 寒梅や往き来ほのかに匂ひけり   広島県大竹市  西亀
 しろがねの寒満月の上りくる    広島県廿日市市 永野 昌人
 対岸より低き町なり寒四郎     福岡県福岡市  森内 梅子
小学生の部
 友も我も転びては起きスケートや  広島県広島市  前田 穣佑