主宰俳句
鮎 田島 和生
大琵琶の鮎ひらひらと釣られたる
釣り上がるいといとけなき鮎の口
みづうみの雨見え来る植田かな
遠嶺まで田水明りの越の国
浜大根沖の立山ほの白き
磯釣の子へ老鶯の幾たびも
岡山城 2句
音たてて烏城の門へ椎落葉
新茶汲むまろき茶山をまのあたり
同人作品評(5月号) 大西 朋
立春大吉竹の器に酒をくむ 青木 和枝
暦では立春といえどもまだまだ寒いこの季節。それでも春が来たと思えばどことなく気持ちが浮き立つ。そんな中、何かよいことがあったのだろうか。竹の器に酒をくんで飲んだ作者。ほのかな竹の香にお酒も進みそうである。
梅匂ふ立山白く輝けり 小林 れい子
どの山々も雪を被れば美しいが、立山のような連峰であれば視界に入りきらないほどのスケールで迫ってきて見事であろう。そして早春の日に輝き、よりその白さを増す立山。その景色を眺める作者の周りに梅の香りが漂い、赤と白の遠近の対比もまた美しい。
新 同 人 作 家 競 詠
立山連峰 生田 章子
雪嶺の色を変へつつ初日の出
迫り来る立山連峰寒に入る
まなかひにしろがねの山春菜摘む
陽炎に白き立山動く如
立山の宙に浮きゐて冬隣
立山の裾青々と春の風
万葉の海 辻江 恵智子
単線の終着駅や初つばめ
背戸に干し春の小鰯錫色に
乳銀杏四方へ芽吹きの古刹かな
會遊の万葉の丘麦青む
春の日のきらめき蛇行射水川
二上山(ふたがみ)へ段々畑すみれ草
万葉の浜辺に遊び跣の子
紅頬集 秀句佳句 田島 和生 主宰
越の風野に吹き渡り花りんご 福江 真里子
まだ雪を残す立山連峰から拭き降ろす風が野を渡り、りんご園の薄赤い五弁の花を震わせている。野を吹き渡る越の風という大景と、小さなりんごの花を対比させて詠み、大変気持ちのいい作品である。
花嫁の髪に挿しをり赤き薔薇 志賀 理子
白いイブニングドレスを身にまとった花嫁の髪に薔薇を挿す。それも真っ赤な薔薇。前句に〈花嫁の髪結ふ母や風薫る〉があり、薔薇を挿すのも母らしく、結婚する娘を美しく飾っているのである。
以上、俳誌「雉」7月号より抜粋いたしました。