主宰俳句
明くる夜は光まみれの浮き寝鳥 田島 和生
林 晴美さん ご逝去二句
美しく老い逝き給ふ冬薊
温顔の遺影となりし寒さかな
同人作品評 (12月号) 武藤 紀子
いかづちのひっきりなしの夜伽かな 小室 登美子
「いかづち」は雷のこと。猛々しく恐ろしい魔物の意味もある。本来は恐ろしい神の意で、記紀神話などでは鬼や蛇のようなものと考えられていた。揚句は、その恐ろしい「いかづち」が次々と鳴り響いて「夜伽」をしてくれるという。「夜伽」とはどういうことかというと、一晩中寝ないで、そばに付き添ってくれることだ。なんと面白い句だろう。できれば「いかづちさま」のご好意を、いんぎんにご辞退したいものだ。
女子大学真葛原の風に立つ 太平 栄子
郊外の葛の生い茂る野にすっくと立つ女子大学。私自身は小学校から大学まで、すべて男女共学だったもので女子大の様子はよくわからない。それに現在は女子大学はめっきり減ってしまった。揚句には戦前の匂いが少しある。真面目でしっかりもので自立している女子学生のイメージが浮かぶ。女はこうでなければ!さまざまなしがらみもすべてきっぱりと払いのけ、世間の風に抵抗してすっくと立つのだ。
頬紅集 秀句・佳句 田島 和生 主宰
遠ざかる列車の汽笛日向ぼこ 野崎 郁雄
穏やかな冬日を浴びながら、縁側に座っているのだろうか。列車が長い汽笛を残し、音も遠ざかる。ゆっくり流れている時間を感じさせる妙句である。
以上、俳誌「雉」2月号より抜粋いたしました。