主宰俳句
河 童 忌
田島 和生
河童忌の雨はらはらと青木賊
むくげ咲き湖岸の村を通り雨
闇雲にとべば壁打つ油蝉
山鳩のいつもくるこゑ明易し
咲きそめの枝は臂めき百日紅
古魞をゆさぶり来る土用浪 明石2句
戻り梅雨べらの赤青糶られゐし
石擦って逃げゆく蛸の大頭
同人作品評(7月号) 中村 雅樹
三十間長屋のあたり蝦蟇の声 太平 栄子
この句は「三十間長屋」で面白くなりました。言うまでもなく、「三十間長屋」とは金沢城にある古い建物で、重要文化財と聞いています。あたかもここの主であるかのように、蝦蟇が鳴いているのです。
紅 頬 集 秀句佳句 田島 和生 主宰
露天湯に平和談義や合歓の花 亀田 次郎
最近の精児情勢は不穏で、目が離せない。久しぶりに露天湯に浸かったが、やはり知人とは平和談義である。露天湯の空に咲く美しい合歓の花とは対照的に物騒な話になる。落ち着かない気分をよく描いている。
杖持たぬ日もある夫や雲の峰 宮崎 惠美 作者の夫は、同人の宮崎明倫氏。体を壊し、外出は大体、杖に頼っている。ただ、お天気で体調のいい時は、杖なしでも歩ける。明るい未来が開けてくるように、雲の峰を向こうに夫婦の足取りも軽い。明るく、いい作品である。
以上、俳誌「雉」9月号より抜粋いたしました。