主宰俳句
滝 田島 和生
白山の雫集めし瀑布かな
滝壺を滝割る如くとどろけり
とこしへの一瞬を滝落ちゆけり
懸崖の滝見えずして鳴りとよむ
白山の瀬音に混ざり河鹿笛
白山の雲高き日の桐の花
山藤を仰げば岨(そば)の倒れ来る
山藤を手折るをみなの濃く匂ふ
同人作品評(5月号) 平田 冬か
芽柳や板一枚の舟着場 吉田 泰子
「板一枚の舟着場」とある。渡し舟でなく、湖や川で漁をする小舟用だろう。漁師が一人乗り降りするだけならば板一枚で足りる。そこの目印の一本柳が芽吹いて美しい。舟を繋いでおくための柳かもしれない。
キリストの目鼻失せたる踏絵かな 福江 ちえり
江戸時代にはキリスト教を邪宗として禁じ、キリストや聖母の像を踏ませて信者かどうか調べた。余りにも多くの者に踏ませたため像が磨滅してしまい、目鼻もわからなくなってしまったのだ。踏絵の哀史を物語るものである。
新同人競詠
丘陵公園 宮崎 惠美(金沢)花菜風腹這ふ犬の毛の長し
夫のせて左岸右岸と花見かな
空と丘のあはいに座すや花の雲
禅寺の鐘撞く丘や春夕焼
レッスンのトランペットや風光る
芝草に寝そべる空や五月来ぬ
頬紅集 秀句佳句 田島 和生 主宰
串焦げし木の芽田楽峠茶屋 川田 けい
木の芽田楽は豆腐に山椒味噌をつけてあぶり、素朴な味わいがあっていい。峠茶屋で出された木の芽田楽を見たら、串が焦げていた。いかにも野性味もあり、風が渡る峠にふさわしい。
以上、俳誌「雉」7月号より抜粋いたしました。