田島和生主宰選
〈特選〉
図書館の窓にきらめき椎若葉 度山 紀子
海市立つ能登の岬の反転し 山岸 昭子
能登富士の映ゆる水田や匂ひ鳥 後藤 桂子
〈並選〉
棟上げの掛矢の音や若葉風 小林 亮文
下萌や地鶏の卵ころがれり 海野 正男
鳴龍を一たび鳴かせ春惜しむ 佐瀬 元子
洞穴へ渦巻く潮暮の春 後藤 桂子
茄子胡瓜支柱はしかと蝶結び 生田 章子
岩洞の座る石仏滝の音 田崎 宏
白山の風に揺れゐし麦の波 後藤 桂子
汐の香の醤の町や小判草 辻江 恵智子
こでまりの花のうねりて風の中 福江 真里子
繋ぐ手を放し幼の子猫追ひ 度山 紀子
薫風や自転車に妻油差し 田崎 宏
青天に白山聳え清和かな 本多 静枝
大窓へ黒き一閃初燕 海野 正男
思ひ切り伸ばす節々五月来る 山岸 昭子
永き日や草の長き根掘り起し 佐瀬 元子
御輿蔵銀杏若葉の影のゆれ 辻江 恵智子
板垣の外へ一枝の雪柳 福江 真里子